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オタク、線をまたぐ  作者: 物理試す


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ホッカ2

日が落ちてからずいぶんの時間が経った。

人はおらず、車輪が回る音だけがなる。

城の近くまで来ると、ケニーが待っていてくれた。

ケニーの案内を受け、倉庫のような場所に来る。


ケニーに案内され、倉庫の中に入っていく。

倉庫の中には、地面に掘られた隠し扉があり、ケニーが軽々と扉を持ちあげ、中へ入るように促す。


中には城の方向へつながる回廊があり、進んでいく。

やがて階段があり、上っていくと城の内部へとたどり着いた。

ここまで厳重にする意味があったのだろうか?


いやあるか。少なくとも俺やアレクは帝国から命を受けて、王国内部に侵入している。現状、王国からすれば明確な敵兵だ。


城の内部を進んでいくと豪華な広間へと出る。

複数人の人が待ち構えていた。


クララに似た妙齢の女性。その隣に年齢は重ねているが、しっかりとした体躯の中年男性。

他にも若い男女が複数名と兵士やメイドが控えている。

クララはいないようだ。


「ケガを負っている者たちを介抱せよ。」

中心にいた男性の一声により、メイドのみが動き出し、俺たちの後ろからついてきたけが人の介抱に回る。

ひとまずの敵意はないようだ。


その様子を確認し、正面の男に向き直る。

「そこの杖を持った男に、アレク殿、それから、リナさん。私についてきてもらえるかな。」

二人は知り合いか?

男はそれだけを残して、振り返り歩いていく。

俺は、杖の男は俺のことだな。まあ、名乗っていないから当然だな。


「タロウさんです。ルイス・アドキンス様。」

ルイス・アドキンスと呼ばれた男は、目線のみを後ろによこす。


「少し見ないうちに、生意気な口を利くようになったではないか。」

「これから対話を行う相手の名前を知らないと、大事なお話ができませんと思いましたので。」

「ふん、いいだろう。」


ルイスは豪勢な部屋に案内する。

ルイスと他二人の若い男性が席に着いた。顔つきがどことなく似ている。おそらく息子達だな。

俺はアレク、そしてリナはそれぞれ席に着く。


「さて、お前が魔法使いタロウだな。」

「やはり、知っておられたのですね。クララから聞きましたか?彼女は今どこに?」

「あいつなら少しばかり、お灸をすえただけだ。そしたら口もききたくないと勝手に地下の独房に引っ込み負った。」

何をやっているんだあいつは・・・


「問題はあいつが連れてきたお前たちだな。」

「クララさんは悪くありませんわ。やさしさに付け込んだのは私です。」

リナはルイスの言葉に間髪入れず、答える。


「あの駄娘の善悪の話ではない。リナさん。あなたの存在についての話をしている。」

なるほど、聡明と言われているだけある。冷静に問題を切り分けているし、よく知っている。本番はここからか・・・


「ルイスさん。あなたはリナについて何を知っていますか?あなたは王国にとってどのような立場にありますか?」

「全てを知っているわけではないし、どのような立場か、相手が世界唯一の魔法使いであれ教える義理はないだろう。」

俺の質問に、相手の圧力が増す。


「これをご存じですか?」

俺は王国兵から回収した特殊な魔石の一部を見せる。

ルイスはなにも変えなかったが、隣の2人は体に力が入った。表情は変えなかったが、体の魔素が激しく動いた。


「ただの無加工な魔石に見えるが?」

ルイスはわかりやすくとぼける。


「知っているようですね。体の魔素が動いていますよ。両隣の方の」

ルイスは驚きの表情をしている二人に、一瞬だけ視線を送る。


軽くため息を吐くき、俺の取り出した魔石を手に取る。

「淡い青色の不格好な魔石。にも関わらず出力の高さをうかがえる魔素濃度、明らかに王国が作り出した新しい魔石だな。」


「ええ、敵対した王国兵が使用していた物を回収したものです。その魔石は一体何ですか?」

「はっきりと聞いてくる。詳細は知らん。というより調査中だな。人をもとにした人体と魔石の融合物。人の数だけ魔石を作れるかと思いきや、そう簡単ではないようだ。理論は完成してるが、正しく作り出せるわけではない。」

人間を材料にしているのは間違いないか・・・


「魔石の出力は強大だが、コントロールはできなく,、コップから水があふれるように、その場に自然現象が満ちる。敵味方巻き込んでな・・・とても道具と呼べる代物ではない。」

「私も魔石を利用している場面に出会ってきましたが、皆一様に魔石に飲まれていました。唯一ノイマンという男が使いこなしていたといえますが。」

「なに!?ノイマンだと確かにノイマンなのか?」


何をそんなに気にするのか?

「確かにそう言っていました。」

「ノイマンは王国の最上級研究員であり、高位の魔術使いだ。目的のためなら手段は選ばない。まさかそんな男が出払っているなんて」


アレクに説明を求めて視線を向ける。

珍しく通じたのか、説明してくれた。

「本来、上級の人間は現場にはでてきません。もし、でてくるような事があればそれは国家にとって重要な局面の場合のみです。」

なるほどそんな意味があったのか・・・


ルイスはリナを見てはっきりと話す。

「クララから事前に聞いていたのだがな。やはりあなたをこの街でかくまうことはできない。あなたには国家が動くだけの価値がある。この街は強靭な街だが、国家を受け止める余力はない。申し訳ない話だがな。」


リナはゆっくりと視線を落とした。


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