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オタク、線をまたぐ  作者: 物理試す


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154/222

山の戦地5

キラキラと輝く左腕。

魔石は腕の肉に食い込み、完全に固着している。


そして気づいた。

注意深く魔石を観察していたから。


あの腕の魔石、魔素が流れ込んでいる?

「離れろ! 魔石が起動している!」


尋問室に俺の言葉が響く。

俺は敵兵に向かって走っていく。

魔石に流れる魔素を、攪乱して発動を先延ばしさせよう。

俺の言葉に驚いて、敵兵から離れていく帝国兵。

それとは反対に敵兵に近づく俺。

「タロウ、また無茶をして。何かあったらその敵の男の首を飛ばします。」


アレクの言葉を無視して、敵兵の腕に張り付いた魔石に触れる。

俺の魔素を流し込み発動を乱す。

? 

おかしい。

常人なら、こんな風に他人の魔素を流し込まれれば、魔石は効果を発揮しない。

にも拘らず、魔石はどんどんと温度が上がっていく。

本人の意思とは関係なく魔石が発動している。

「く、どうなっているんだ?なんで温度が下がらないんだ。」

「う、うあああああ、もういい、腕を落としてくれ。早く!」

魔石はさらに温度が上がり、魔石と腕の接続部から出血が始まる。


このままでは焼けて死んでしまう。

とにかく腕についている魔石の効果を止めなければならない。


今までとは逆に王国兵の腕に張り付いた魔石の魔素を吸収していく。

その瞬間、俺の手に魔石が生える。


!? 

こんなことが起こるのか!? 

落ち着け。魔石は魔素を吸収すれば破壊できる。手に生えた魔石から魔素を移動させるようにイメージする。

吸収した魔素を空気中に拡散させ、それでも足りないならば魔術を発動し、あふれ出る大量の魔素を発散させていく。


自分の体の周りに紫電が走る。

俺の体の周りには、魔石を普段から使っていない者でも感じ取れるくらい大量の魔素があふれだす。


もういいだろう

「アレク、俺の腕に生えた魔石を破壊してくれ!」

「いいのですね。」

アレクは確認をとるや否や、素手で俺の手に生えた魔石を殴りつける。

何の痛みもないまま俺の手についた魔石は粉々に砕け、元の手が現れる。


「良し!続けるぞ。」

方法はわかった。

あとは魔素を抜き取るだけだ。

目の前で苦しんでいる男から魔素を抜きとっていく。


濃すぎる魔素に胃がむかむかするような感覚を覚えるが、いまはやめられない。

やがて男の腕にまとわりついていた魔石がぼろっと崩れ落ちた。


敵の男は完全に気を失って魔石がついていた腕はひどいやけどの跡がついているが、大事はなさそうだ。


終わった。

何とか魔石の暴走を止めた。俺はその場に崩れ落ち、尻もちをつく。

「終わりましたか?」

アレクが話しかけてくる。


「ああ、もう問題はないと思う。何とかなるものだな・・・」

「突然のこととはいえ、さすがの対応力。お見事です。」

「なんだよ。やけにほめるじゃないか。素直に受け取っておくよ。」

立ち上がり、周りを見渡すと帝国兵に囲まれていた。


しまった。

勝手し過ぎたか・・・と思っていたが、次第にお礼を言われ始める。

すぐに、その戦闘地域を取り仕切る軍部に呼びだされた。

「お疲れのところ、すまないが、先ほどの事象について説明を求める。タロウ殿。」

「あれは、・・・


軍部に事のあらましと実際にやったことを説明する。

結果は帝国政府に伝えられるそうだ。


勝手したことに対し、特におとがめはなく、さらに功労者として評価され軍で使っている上質なテントを使わせてもらえることになった。


疲労も重なり、すぐに眠ってしまった。

次の日、午後から敵の男が目を覚ましたということで、尋問が再開された。

今度は俺にも質問できる機会が与えられるらしい。


早速男のもとへ向かうと地面に薄い布を引いて、そのうえで寝かされていた。

かわいそうだと思いながらも、何とか耐えてくれと願うことしかできなかった。


男は俺に気づき目を見開く。

「どうだ、体調は悪くないか?」

「ああ、あんたか、助けてくれて、ありがとう。敵兵をここまで助けるなんて変わったやつだな。」

「よく言われるよ。腕の魔石はいつから出始めた?」

「あまりはっきりと覚えてないんだ。この戦争に参加する前に、王宮近くまで行ったんだ。

そこで強くなれるからって薬を飲んだんだ。」


薬、明らかに怪しい物が出てきた。

疑わずにいられない。

「それからだ。だんだん腕がかゆくなってきて、いつの間にか、腕に魔石がついていたんだ。」


普段の生活についても話を聞いたが、特別変な話はなかった。やはり変な薬というのが怪しい。

「そういえば、王宮で薬を配っていた研究者が話していたよ。魔石への反応性を上げる物だとかなんだとか・・・正直、魔石への反応性がいいとか・・・俺にはよくわからなかった。

その男が言うには、この世には反応性が良すぎて体が魔石化しちまう人間がいるらしい。まさか自分がなるなんて思わなかったよ。」


男の話を聞いて、鳥肌が立つ。

リナさんが危ない。このままでは彼女が兵器として使われてしまう。

人間を魔石にしてしまうような研究者だ。

確実に実験材料にするだろう。


話を察するに、まだとらえられていないようだ。

今動けばまだ助かるはず。


その日の夜、アレクにクララ、ケニーを集める。

「みんな、これからエントシまで行こうと思う。そこで訪ねたい人がいるんだ。」

「ローリング家を訪ねるのですね。いいでしょう。今回のリーダーはあなたです。あなたの決定に従います。」

「私たちもいいよ~危なそうなら、安全な場所を案内するよ。あんまり行きたくないけど。」「うっす。」

あんまり行きたくない安全な場所ってどんなところだろう?気になるけど、クララの案内なら信頼できる。

良し、チームの了解は取れた。

すぐにでも向かおう。


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