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帝国Ⅵ-10

数日後、タロウはエマさんに呼び出しを受ける。

「なるほど、王国で使われた不思議な魔石の謎を解明するため帝国から依頼を受けて王国内に侵入したいというわけですね。?」

「そういうことですね。それで長距離を移動するために、魔導三輪を治したいんですよ。」

「タロウさん!魔導三輪を、これからも戦闘に使わないと約束できますか!」

エマさんはとてつもない剣幕で聞いてくる。

「はい、戦闘には使いません。移動のために使います。」

「ならば、魔導四輪の最新モデルをお渡しします。絶対に返してくださいね。」

「ま、待ってください。あれはまだ調整が終わってないですよ。」


ダニエルがかぶせるように現状を伝えてくる。

「大丈夫です。3日ください。材料は揃っています。必ず完成させます。」

エマさんは力いっぱいに答える。

おそらく彼女ならやり切るだろう。それほどの実力がある。

「僕も手伝います。せっかくの機会ですから全力を尽くしますよ。」


初日は材料のありかを確認して終わった。

エマさんが言っていた最新モデルは各種性能をブラッシュアップさせたモデルで、今まで使っていた魔導三輪とは比べ物にならないぐらいすごい。本当にエネルギー源が魔石ベースなだけで車のようだ。


エマさんとの打ち合わせを終え、自宅へ帰る。

明日は、ここに放置している壊れた魔導三輪をダニエルが見に来る。少しは片づけておくか。

見やすいように魔導三輪の周りに空間を作る。ある程度やったところで満足する。


次の実験。いや研究に移る。

もうどれくらいやっているだろうか。アラスオートを出たあたりから時間を見つけては続けている。

肉体の再生。

イワンの片腕を失ってから・・・イワンの奥さんが願った事を実現するため研究を続けていた。


といってもかなり難航していた。当然だ。簡単なわけがない。

まずは勉強からだ。

自宅の地下へ向かう。そこに一冊の本があった。

この世界にやってきたときに一緒にこっちの世界へやってきた本。

元の世界の物理学書など、理学に関わる本だ。この中に医学とは言わずとも体の仕組みやトピックスなどが書かれている。それと合わせて、この世界にある医学の本も読み漁っていた。


この世界は何でも回復の魔石で治療してしまうから、医学の知識は疎いかと思っていたが、ニッホン製の書物はかなり詳細に体の内部構造を記した書物が多かった。

以前の戦いを思い出し嫌気がさしたが、過去のことだ。もう忘れておく。


勉強のかいあり、おかげでそこそこ知識はついてきた。

目指すは万能細胞の製作。

赤ん坊がおなかの中にいる最初の時、体のどんな部位にでもなれるという細胞があるそうだ。


これを魔術や魔石の力を使って再現できないだろうか?魔素や魔石は身体と非常に親和性が高い。

この性質を利用すれば、可能性はあると考えていた。


問題はどうやって実験をするか・・・さすがに他人の体を使って人体実験を行うわけにはいかない。

自分の髪や爪を使って実験をしていく。

もちろん医学を学んでいたわけではない。

理論、理屈から狙って実験を行えるわけではない。

力技の手当たり次第だ。


これまでの実験で、細胞を魔石の中に閉じ込めることはできていた。

魔石病の研究結果や液体魔石を利用するとここまでできた。特にアカウ村から始まった魔石病の研究のおかげで、進捗は良い。


ここから、さらに万能細胞まで変質させる。道は長いがやりがいがある。生涯をかけてもいい。

現状だけでも万能細胞を取り出す方法がないわけでもないが、安全性が不明なうえ、俺にはできない。

夜遅くまで実験が続いていく。


次の日、朝早くから、扉をたたく音が聞こえる。

昨日も夜遅くまで実験をしていたから、朝は眠い。


眠気眼で扉を開けると、予定通りダニエルと、そして、ノエルがいた。なんで?

「うおおおおお、これがタロウさんが改良した魔導三輪ですか!?各部に液体魔石が使われているし、エンジンもところどころ改良されている!研究のやりがいがありますよ。こっちの線はどうしてタイヤにつながって・・・」

ダニエルは壊れた魔導三輪にくぎ付けとなり、観察と実証を繰り返している。


俺はその様子を遠目に見ていた。テーブルをはさんで目の前に座るノエルはなんだか機嫌が悪そうだ。

「あいつは何?」

「あいつって・・・ダニエルは俺の研究仲間だ。魔導四輪の開発者の一人だぞ。」

「そう・・・」

なんだろう。機嫌が悪いのかと思ったが、違うようだ。

会話が続かない。


「あんた、戦場へいくの?」

「ああ、そのことか・・・そうだな、確かに戦場へ行くよ。といっても後方で調査だけどね。」

「馬鹿言ってんじゃないわよ!」

ノエルは大きい声を出して立ち上がる。

鬼気迫る顔に思わずたじろぐ。

「団長だって・・・団長だって戦場ではない場所で戦争が原因で死んだのよ。後方だからなに?」


ノエルの言葉に、自分の甘さを実感する。

「そうだな・・・ノエルの言う通りだ。認識が甘いな、俺は。気を引き締めるよ。」

「私も大きな声を出して悪かったわね・・・私も行くわ。」

「行くって、戦場にか!?」

「そうよ。あんたが心配だもの。悪くない話でしょ。」


確かにノエルは強い。アレクとどっちが強いかわからないぐらい強い。でもノエルが着たらどうなるだろう。協調性が低く、戦場で勝手な行動をとるやもしれない。そっちの方が危ないんじゃないか?


「き、気持ちはありがたいけど、ノエルには頼みたい事があるんだ。」

「なによ。」

ノエルのにらみがきつい。

「頼みたいことってのは、この家の警備なんだ。ほら、最近は色々と、物騒だろ?この家には大事な研究成果がたくさんあるからさ、守ってほしいんだ。守ってくれている間は、この家に住んでいいからさ。」

「本当!」


? 絶対反論されると思ったのに、予想外に受け入れられた。どうしてだ?

ノエルは何故か上機嫌となり、何かを思い出したように街の方へかけていった。


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