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オタク、線をまたぐ  作者: 物理試す


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帝都5

お昼を済ませた後、エマの研究所に行った。

「こんにちは、エマさん。調子はどうだい。」

「おかげさまで、予定より早く研究に取り掛かれそうです。

今日はどうなされたのですか?」


「少しだけ、聞きたいことがありましてね・・・

研究者というのは、どうやってなることができますか?」


「突然ですね・・・タロウさんは研究者になりたいんですか? 名乗ることは、誰でも自由に名乗れますよ。

ただ・・・研究結果を信頼できる研究者に推薦してもらわないと、色々と・・・認めてもらえないんですよ。・・・もしくは誰かの研究所出身で所属していたことを証明することですかね?」


「なるほど・・・ありがとうございます。あともう一つ、魔石や道具の加工は鍛冶屋が行っていると聞いたのですが、これは世界共通ですか?」


「はい、そのように伺っています。私も今は鍛冶屋で加工してもらってます。ただ私は帝国を出たことがないので・・・実際にどうなっているかはわからないです。」


「ありがとうございます。色々見えてきました。」


「どうしたんですか?まさか!商団をやめるんですか?」

エマさんは身を乗り出して、聞いてくる。

俺は団長との契約について話した。


「なるほど、団長さんはとてもお優しい方なのですね。それでタロウさんはどうなさるのですか?」

「俺は・・・・」


それから俺は色々と準備をして回った。

数日過ぎ団長のもとを訪ねた。


「やあ、タロウ君、気持ちは決まったかね?時間もないからすぐに答えを聞こうか。」


「はい・・・私は団を抜けようと思います。」


少し残念そうな顔をした団長は

「理由を聞いてもいいのかね。団に問題があるのかい?」

「この団は素晴らしいです。はっきり言って今、抜けるのは俺にとって、痛手でしかないです。思い出したんです。大切なことを・・・

私は元の世界で、物づくりが好きで、物づくりを学ぶ人間でした。それで最初は自分が興味を持ったものを自由に作るために学んでいました。

でも、多くの人から習っているうちに、、、うまく言葉にできないのですが、自分のためだけだと、すぐにつまらなくなる気がするんです。この世界に居ても居なくても変わらないんです。

だから好きなことをしつつ、それが大小かかわらず、世の中のためになる必要がある。

と思ったんです。」

「そうか・・・こう言ってはなんだが、商団にいてもできるのではないか?・・・いや、団にいては物づくりに集中できないか・・・」

やっぱり優しい人だと思う。本来は俺が言わなければならない言葉なのに・・・俺のわがままなのに・・・

「そう・・・ですね。俺はまだまだ未熟ですから、物づくりに多くの時間を割かないといけないと思うんです。それに戦闘は得意ではありませんから・・・」

苦しい言い訳だ・・・


いつの間にか団長は、まるで父のように語りかけてくれる。

「団をやめた後は、どのように過ごすのかな?」

「今後は冒険者をやりながら、魔道具製作者になろうと思います。」


団長は眉間にしわが寄る。

「冒険者は分かるが魔道具製作者とはなんだ?鍛冶屋や研究者とは違うのか?」


「大きくは鍛冶屋とは変わりません。簡単に言うと、その二つの中間みたいな職業ですね。

だけどしばらくは稼げないと思うので、その間は冒険者になろうと思います。」


「なるほどな・・・うまくいくかはわからないが頑張りたまえ、しかし冒険者か・・・冒険者をやったことは無いが、同じように戦いの場にはいた。

そうだな・・・絶対に無理はするな、5割の戦果を挙げて帰還しろ。生きていることが最大の儲けだ。」

とても力強い言葉を受けて、拳を握りしめた。


団長の部屋を後にするとノエルがいた。

「おまえ、団をやめるのか。」

聞き耳を立てていたみたいだ。

「ああ、今までありがとう。

ようやく自分のやりたいことを見つけたよ。皆が教えてくれたことが助けになったよ。」

「ふん!好きにしろ。冒険者だっけ?私が戦えるか調べてやるよ。」


今日はいつになく絡んでくる。しかしこの道を決めてから戦い方も考えていた。

試しに相手になってもらおう。


俺たちは空き地を見つけ、ここで模擬戦を行うことになった。

噂を聞きつけたほかの護衛隊の連中や上司のユーリが来ていた。

「ユーリさん、俺、この団から離れるよ。」

「なんとなく気づいてた。ここ最近一人で戦う練習していたり、駆け回っているの見てたからな。だから見せてみな」

「はい、いままでありがとうございます。」


光の魔石を手にするとノエルの前に立った。

「準備はできたかよ。この石が地面についたら勝負開始な」

俺はうなづいて、構えをとった。

ノエルは小石をちょうど俺たちの間に投げ上げる。小石は目線より上がり、そして地面についた。


瞬間 ノエルが一瞬で目の前に来た。

ノエルの握りしめた木刀がせまる。


驚いてのけぞってしまったが予想通りだ。

何にも鍛えていない俺がまともにやって生き残れるはずがない。

反応できただけ御の字。


俺が反応できなくたって、人の運動速度より早いもので守るだけだ。

俺は一瞬だけ光の魔石を握りしめ、魔術を発動する。


雷の魔術が使えるようになってからずっと練習してきた。

体の前面に電気の筋が一発だけ走り抜ける。俺の全面に電気の柵が出来上がる。


電気の柵にノエルは触れてしまう。

「ぐぅっっく! 相変わらずわけわかんねぇ魔術だな。」

ノエルは攻撃の途中で俺を交わし、通り抜ける。

この程度なら一瞬しびれる程度しかできないか。電気に触れたはずなのに動けるノエルがすごいのか。


でもこれでむやみに突っ込まれるのを回避できる。

「今度はこっちから行くぞ!」

俺はそう言い、魔石を掲げ威力をコントロールした雷の魔術を発動した。

しかし再び、ノエルが一気に距離を詰めてきた。

魔術使いは魔術を発動するのに集中するため動けなくなる。これを狙われた。


「お前ら魔術使いの弱点はいつも同じなんだよ。」

ノエルは勝ち誇った表情で迫ってくる。


これぐらい乗り越えられないと生きられない。

俺は光魔石に流すイメージを変えた。

光の魔石は電気を発することなく、強力な閃光を発した。


魔術使いは魔石の純度に関係なく力を行使できる。これを利用して、俺は初めから閃光の魔石を持っていた。

閃光の魔石は低純度の光魔石で、強い光を発するが一瞬で使えなくなる。

電撃が来ると思っていたノエルは驚いて目を覆い、足を止めた。


この隙を生かさなくては!

魔術の連続使用は非常に体力を消耗する。額に汗をかきながら、新しい光の魔石を突き出し雷の魔術を発した。

電撃が一瞬にして空間を走り、轟音を上げる。

電撃はノエルに当たった。威力はスタンガンよりも低く留めた。


ノエルは地面に倒れているが意識はあるようだ。

疲れて地面に座り込むと、周りで観戦していた人々が歓声を上げているのに気が付いた。

「すっごいな、お前 あのノエルに勝つなんて」

「今のどうやって突っ込んでくるの分かったんだ。」「・・・・」

質問攻めにあっていると、何とか体が動くようになってきた。


ふくれっ面でフラフラのノエルと団長がやってきた。

「今の戦い。見事であった。あれだけの動きができるならば、一人になっても生きていけるだろう。」

団長は見ていた隊員に向かって高らかに言い放った。

「皆の衆、タロウは自分の目標のために、この隊を離れることになった。

今日は新しい旅路を祝して楽しもうではないか!」

皆は歓声を上げ、宴会のため街に散っていた。


その日の夜はみんなで酒を飲みかわし楽しんだ。

急な話だったのに、なぜか餞別なんかも多くて、色々もらってしまった。団長からは餞別に貴重な回復の魔石をもらってしまった。


夜も遅くなって、ノエルに呼び出された。外に出ると身を絞めるよう夜風を感じた。

ノエルは頬を少し赤らめながら訪ねてくる。だいぶ酒が回っているようだ。

「お前本当にこの団を抜けるのか?」

「抜けるよ。でも二度と関わらないわけじゃない。しばらく会わなくなるだけだよ。」

「そんなことできるかよ!お前が元居た世界とは違うんだよ!!!」


あ~ちょっと期待したけど半年以上、一緒にいてわかった。・・・・これは悪酔いだ。


「お前に会えなくなったら、私の負けっぱなしじゃないか!だいたいあれはお前の言う電気とかいうものを知らなかったからだ。」

「ハイハイ、そうだな。魔術無しならノエルのほうが強いよ。」

「そうだ。私の方が強いんだ。だからお前は私の後ろで魔術を唱えてラバいいんだ。」


酔いが想像以上に回っているようだ。

「ノエル、もう中に戻るぞ。中で水を貰おう。全くちょっとだけ期待したのになぁ~」

「・・・期待することもなくはない気もする・・・」

「なんか言ったか?」

「言ってない!戻るぞ。競争だ。」

「おい、ちょっと待てよ」

酒で熱くなった体はいつの間にかさめていた。


二日後の朝

「いいのかノエル?」

「何がだ?私には関係ないね」

「はぁ、それじゃあなタロウ元気で頑張れよ。」

団長に激を飛ばしてもらう。

「はい ありがとうございます。皆さんもお達者で。」

俺は離れていく商団が見えなくなるまで、町の出口で見ていた。

「さあ、俺も今日から動き出さないと。 全力で生きねばね」


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