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オタク、線をまたぐ  作者: 物理試す


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交易都市 オヤイモⅡ-1

目を覚ますと、見たことがある天井だった。

強烈な既視感がある。このくだりは一体何度目だろう。

ここは交易都市オヤイモが提供している宿泊施設だ。


これが死後の世界でなければ、魔獣を討伐し街に入れたということだ。

体を起こすと、かなり大きな部屋が割り当てられており、そこには予想しないほど、たくさんの人が談笑していた。

「なんで、みんないるんだ?」

「おう、起きたかタロウ。」

そこには商団の皆やアレクたち、リルカ とコイルもいる。

「お久しぶりですね。まずはこちらを魔獣討伐の報酬です。」


久しぶりに見たアレクは以前と変わらない様子だった。アレクから、魔獣討伐の報酬をもらう。

「タロウはどうして始まりの森にいたのですか?」

アレクは椅子に腰かけ、聞いてくる。彼のケガは完全に完治していた。他の面々も同様だ。

今回もボロボロなのは俺だけだ。

自分の貧弱さに物足りなさを感じながらも、今までを顧みる。


勇者伝説のほぼ全ての情報を手に入れたこと、その過程で各国のさまざまな情報を手に入れたこと、グレーな情報も手に入れた事で、国にいられなくなったこと。

振り返ってみると色々ある。色濃い旅路だった。


「アレク達はなにかあったか?」

「私たちの方は特に変わったことはありませんよ。いつものようにギルドの依頼を受けて、達成し、そしてまた依頼を受ける。その繰り返しです。しいて言えば戦争関係の任務が増えたことでしょうか。」

「戦争関係?」

「ええ、あなたもご存じでしょう?王国が、帝国に宣戦布告しました。戦争の発端となったのは各国の境界線にある魔石の大採掘地の利権だそうですよ。おかげで私のところには朝から臆病な貴族たちの依頼でいっぱいです。」

アレクは冒険者ランクが高い。

ランクが高い冒険者は貴族からの依頼を受けることができる。貴族からの依頼は、大抵高報酬で、ぬるいものが多い。だから、明日の命の保証がない冒険者たちはこぞって貴族の依頼を受けるのだが・・・

「結局、うるさいのがいやでしてね。最近なぜか出現数が多くなっている魔獣の討伐を受けることにしたというわけです。ついでに暇そうにしている彼女たちを誘ったわけです。」

「簡単な依頼だって聞いたら、魔獣討伐だよ。まいったよね~。」「うっす。」

本当に彼らは変わらないようだ。


そして

「こっちも久しぶりだな、ノエル。元気そうだ。」

「ええ、そうね。あんたは死にそうね。」

久しぶりに会ったノエルは以前よりも大人っぽくなったように感じる。言葉遣いが変わったかな?

何故かあまり視線を合わせてくれないし、久しぶりで緊張しているのか?

意外な側面もあるんだな・・・

「久しぶりだ。タロウ。生きていてよかった。」

「副団長、お久しぶりです。また会えてうれしいです。どうですか最近は?」

「ぼちぼちだな、最近は戦争のせいで上がったりだ。戦争に備えるようになって武具や日持ちのいい食料は売れるが、それ以外はからっきしだ。」

「どこもかしこも戦争ですか。嫌になりますね。」

「全くだ。本当に・・・」

「?・・・そういえば団長は今どちらに?」

ドンッ 俺が質問をしたと同時にノエルが壁を殴る。

一体どうしたのだろう?


副団長が重く口を開く。

「団長は戦死した。正確には戦争で発生した野盗や魔獣との戦闘で負ったケガが原因で亡くなられた。」

団長が亡くなった・・・?あの団長が?

「そんな・・・」


「帝国が宣戦布告されたのはつい最近ですが、長年小競り合いが続いていました。というより長い間、続きすぎました。職を失い野盗に身をやつす者は多くなっています。」

アレクが現在の状況を補足するように解説する。


「普段は安心して通れるはずの街道を通っているときに奇襲された。その時は何とかしのいだ。だが団長を含め数人の物が傷を負った。それから予想以上に魔獣が多く、少ない戦力で、戦わなければいけなかった。」

結果、団長は手負いの身でありながら最前線に立ち続けた。そして最後には消耗して帰らぬ人となった。

副団長の話す言葉はよく理解できたけど、納得できなかった。心にぽっかりと穴が空いたようだった。

それからというのも、俺の体力が回復しきっていないことを考慮してお開きとなった。


夜、何もない天井をじっと見つめていた。

さっきまでぐっすりと寝ていたので、眠れないのだ。

いや、それだけではない。色々な話を聞いて、頭の中を思考が、ぐるぐると飛び回っていた。


亡くなった団長と一緒にいた期間は短い。

でも過ごした期間以上に恩がある。せめて、もう一度会いたかった。

涙は出ないけど、思うことは止められない。


そんな時、コンコンとドアをノックする音が聞こえた。

「はーい」

「早くしなさいよ。」

そこには、何の前触れかノエルがいた。

「の、ノエルどうしたんだ。こんな夜中に。」

「別にどうでもいいでしょ。ちょっと話に来ただけよ。」


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