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オタク、線をまたぐ  作者: 物理試す


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ニッホン12

その日は朝から騒がしかった

俺はいつも通り資料室のもとへ向かおうとしていた。しかし本殿の方から衛兵と思しき人たちが何人か走っていくのが見えた。

衛兵たちは、人々をすり抜け街の外へと走っていく。

いつも同じ道を通るから、「顔なじみになったおばちゃんに彼らが走っていった理由を聞いてみる。

「あんた知らないのかい。アイツらはね。魔獣を狩りに行くんだよ。最近多いからねぇ。」


そう言ってリンゴのような果物を一つもらった。みずみずしくておいしい。

おばちゃんに礼をいい、目的の資料室に向かう。


それにしても、もうすでに、街の近くに魔獣が増えていることは知れ渡っているようだ。先日は王国による帝国への宣戦布告の伝令が町を駆け巡り、民衆が大変動揺していた。伝令を受け、商売のために動く者、保身に走る者、多種多様だ。


俺がこんな風に客観的に見れるのも、ぶっちゃけ戦争に興味がないからなのかな・・・


いつものように資料室で調査を開始したタイミングでキサイにまたあった。

「タロウ殿、進捗は順調ですかな?時に今は何に注目しておられるので?」

「そうですね。おかげさまで多くを学ばせていただいてますよ。今は勇者が戦っていたとされる伝説の魔獣について調査しています。」


正直なところ伝説の魔獣をいくら調査したところで、元の世界に帰る手段など発見することはできないだろう。


今最も調査すべきは勇者も通ってきたという黒い穴だ。歴代の勇者たちが元の世界に帰れず、しかし黒い穴の出現と、勇者の出現、伝説級の魔獣の出現に相関がある以上調べないわけにいかない。


何らかの影響を受けて、活発化している伝説級の魔獣たちを調べて周辺の情報に至るまでヒントになりそうなものは片っ端から探していくんだ。


「ほう!、伝説の魔獣ですと・・・しかし、なぜ?」

「まだまだ精度の低い憶測でしてね。勇者と呼ばれる者たちと、伝説級の魔獣が出現しているタイミングがやけに一致しているなと思って・・・」

「以前も気になっていた事ですな・・ですが伝説の魔獣が現れるから、伝説の勇者が現れてくれるのでしょう。そうに違いありません。」

「はは、キサイ殿ともあろうお方が、そんな決めつけをされるとは、それにもう一つ気になる現象がありまして、個人的にはそっちのほうが「キサイ様! 天守様がお呼びです。」

話をしている途中で、若い兵隊がキサイを呼びに来た。


「すみません。タロウ殿、私はこれにて・・・」

いうより早く、キサイは兵隊とともに本殿のほうへと行ってしまった。

残された俺はただ一人、調査を行うのであった。


「キサイ様・・・やはり彼は迷い人と魔獣・・・それも伝説と呼ばれる魔獣の関係を知っています。」

「ああ、予定通り。計画を進めるぞ。」

キサイはいつの間に立てたのか、タロウを味方に引き寄せる作戦を考えていた。。


お昼ごろ、いつでも出国できるようにギルドに取り次いでもらおうと手続きをしにきた。

以前から何度か話したことがある活発な受付嬢に会うなり妙な事を言われる。

「おい、タロウ悪いことは言わない、今すぐこの街をさりなさい。」

「なぜです?」

「なぜって、タロウも、うすうす感づいているでしょ?この国はいづれ大きな戦いに巻き込まれる。あなたほどの力を持つ者を逃すはずがない。都合がいいように使われたくなければ今すぐこの国をさりなさい!」

「この国にどんな思惑があるのか私には図りかねますが・・・どうしてあなたは味方してくれるのですか?」

「なーに何事だって一枚岩ではないってことよ。この国は好きだけどね。」

「気を付けます。」


とは言ったものの、調べられることは徹底的に調べ上げたい。

その日も午後から秘蔵の図書を調査する。

勇者が使った物に何らかの共通点とかないだろうか?


400年前に存在したとされる伝説の勇者が使っていた武器は大剣だ。それはこの国が武器として使っている特殊な術に似ている。いや というよりはこの国の武器が勇者をまねたという感じか。

資料室で得られた断片的な情報と、今まで得てきた勇者の情報。

そして数は少ないが、この国が公開している砕いた魔石の利用方法や製作方法から、推測するに勇者が利用していた大剣は複製され何本か製作されたようだ。


アラスオートやプエトジで見てきたように、液体魔石を使い、製作途中の大剣に塗布し、高温で焼き付ける。まるで刀を作るような製作方法だ。

これも多くの日本人が昔から、介入していたからではないか・・・

それでも、この程度の技術レベルなのか・・・物を作る腕はあっても人に教える腕まであるわけではない。

結果的に技術が断片的にしか伝わらず、今のような形態に変化したのではないか


確証はないが、意図せず、この国の武器の仕組みを知ってしまった。これは・・・言わない方がいいな。

・・・これを知ってしまったなら、なるべく早くこの国を去ったほうがいいな、今日中に旅支度をして出ていこうか。なるべく自然に・・・

帰り自宅をし、正門に向かって歩き始める。その前にキサイに会えないかと、少し探す。


すると、以前模擬試合をした人がいた。確かダテ・マサミツ?だったか。

「すみません、キサイさんを探しているのですがどこに行けばいいですか?」

「あなたは・・・キサイ様ですね。科技院でお待ちください。直ぐにお取次ぎいたしましょう。・・・私からも質問してよろしいですか?」

「はい、もちろん。」

「前回の試合は、何故勢いが無かったのですか。」

「勢いがない・・・?どういうことですか。」

「すみません。私は言葉が頭がよくないので・・・そうですね。取り繕っても仕方ありません。あなたから殺気を感じなかったんですよ。」

「殺気?」

彼が何を言っているか、理解できない。試合のことだろ・・・なんで殺気なんか出さなきゃいけないんだ?というか殺気ってどうやって出すの?


「どうも話がかみ合いませんね。殺気を出さずに、どうやって敵を倒すのですか?」

彼は質問の答えを期待せず、キサイを呼びに行った。

俺はいまだに彼の質問の答えを出せずにいた。


しばらくして、キサイがやってくる。ぼーっとしている俺に声をかける。

「タロウ殿、タロウ殿、どうかされましたかな。」

「あ、ああ、すみません。ちょっと考え込んでいまして・・・」

「タロウ殿は、いつも考え込んでいますな。冒険者というよりは、研究者だ。さて、本日はどうされました?」

「ここでの調査が、十分に進みましたので、次の調査に向かおうかと考えているのです。」

「な!・・・そうでございますか・・・まあ、調査などしなくとも、この国を中心に活動してはいかがかな?タロウ殿には馴染みのある街並み化と思いますし・・・」

「ありがたいお誘いありがとうございます。しかし、私はより多くを知りたいのです。勇者伝説のことも、異世界の移動方法も、だからいかなければいけません。」

「左様ですか。はい、わかりました。調査の過程で勇者の日記を精密に翻訳していただきありがとうございます。おかげで、完全に理解に近づきました。またこの国に来られる際は、ぜひお立ち寄りください。」


キサイとそうそうに別れ、本殿を去り、宿泊地に帰った。


そう思い、宿泊地に帰った。

「二人とも、すぐにでもこの町を出ようと思う。」

「了解。準備できてるよ。」

「おう、こっちもだ。早朝と同時に出よう。」

俺たちは前もって話していた通り、準備を進める。


ところ変わって、科技院の資料室。

影と呼ばれるまるで忍者のような者、キサイ、タカガネ・トシロウが面と向かって話し合う。

「キサイや、かの者がこの国を立ち去るそうじゃないか。」

「ええ、穏便にこの国の戦力とするつもりだったのですが、人の心はうまくいきませんね。」

「この国始まって以来の天才と呼ばれたお前でも、人心は操れぬか。まあ、無理もない。知的興味だけで人を留めるお主の作戦は

最初から無理だったのだ。人の心は恐怖やカリスマの方が、御しやすいからな。知的な興味ではひきつけられぬ。」

「そのようで。」

「しかして、いかようにする。ヤツは知っているのだろ。色々と。」

「ええ、とてつもない、才覚と知識です。予測だけで、この国の武具の制作方法まで、たどり着いたようです。一体どこで、あれほどの知識を身に着けたのか。あるいは、彼がやってきたという元の世界が、この世界をはるかに超えるほどの技術レベルにあるのか。だとすれば、やはり危険ですな。」

「ふむ・・・軽く、圧力をかけて、従わなければ力で抑えるか。」

「で、できれば穏便に納めてください。貴重な能力なのですからな」

「それはヤツしだいじゃな。無駄に抵抗すればヤツは死ぬ。あきらめよ。」

タカガネ・トシロウは吐き捨てるよにキサイの前から去る。その顔をニヤつかせながら。


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