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帝都4

時間が余ったことにより、大通りの出店を見て回る事にした。


火の魔石を大量に並べ、ソーセージのようなものを焼いている。店主が額に鉢巻を巻きながら一生懸命、焼いている。


そんなものを横目に見ながら、通りを進んでいく。昔よく行っていた、地元の縁日を思い出す。


今年は日程が落ちついてから、地元の夏祭りに行けるかと思っていたが、どうやら難しそうだ。


しかし、こんなに大きなお祭りに来ることになろうとは人生何があるか、わからない。


さらに歩き続けると昨日行った商会とは違った、大きい建物が見えてきた。

西部劇に出てきそうな見た目をしている。


なんと冒険者ギルドらしい、初めて見た。


でも異世界と言えば冒険者ギルド!

きっと賑やかに騒いでいるはず、興味本位で中に突撃した。しかし中にはほとんど人がおらず、受付嬢の雑な「いらっしゃいませー」だけ聞こえてきた。


後知った話だが、基本的にみんな昼間は出払っているらしい。

当然と言えば当然か・・・


「ご用件をお伺いします。」


期待して入ったが意表を突く静けさと素っ気なさに、冷静になった。

随分とやる気のなさそうな受付嬢だ。美人だけど。


「あの、冒険者ギルドに始めて訪れたのですが、ギルドはどんな事をしているのでしょうか?」


こう聞いた時、明らかに受付嬢がめんどくさいという顔になった。

しょうがないじゃないか、実際何やってるか本当に知らないんだから・・・


「ギルドは冒険者の登録や発掘物の引換を行っています。また冒険者間の情報のやりとりを行う場も提供。さらには冒険者同士の仲介、トラブルの仲裁も業務に含まれますよ。」


「冒険者は登録制だったんですね。勝手に名乗っても、いいものだと思っていました。それに発掘品もここで売る決まりなのですか?」

何を当たり前のことを・・・みたいな顔をされる。この娘結構、顔に出るな・・・


「冒険者になるのに登録の必要性はありません。また発掘品も個人で販売してかまいません。ただ誰もが販売ルートを持っているわけではありませんから、ギルドが一括で買い取りを行い、だれでもすぐに換金を行えるようにしています。」


なるほど組合と卸業者の合体版みたいなことをやっているわけだな。


「何しろ冒険者は、危険が多いわりに報酬は安定しませんし、手放しだとすぐに人不足になってしまいます。高純度を確保しようとすればするほど魔獣の妨害に会います。・・・ですので少しでも生活を安定させることで、経験を積ませて冒険者の練度を高める役割もあるってわけです。」


意外としっかり教えてくれた。


周りには冒険者がいなかったから、界隈をようやく知れた。

以外にもシステム化されている。どこか物語の世界に憧れていたが、現実に戻された。


「あなたも冒険者になってみませんか。うまくいけば大金持ちですよ。」


キメ台詞なのだろう、メチャクチャ棒読みだった。


「いや、今回は遠慮しておくよ。色々聞かせてくれてありがとうございます。」


俺は少しばかりの金銭を手渡した。


受付嬢は満面の笑みを貼り付け「またのご利用をお待ちしております!」と大きな声で言ってきた。


その日の夜、荷物の整理をしていると、ごとりと重たいものが落ちた。

こっちの世界に来た時、一緒に飛ばされた物理学の分厚い本だ。しばらく見ていなかった。


久しぶりに手に取り眺める。

すべてが懐かしい、もう半年以上も前に必死に使っていた本だ。


今じゃ、俺にとっては、ありきたりの内容だって最新の世界にいる。

これを使えばエマさんたちは飛躍的に科学を推し進めることができるだろう。

分厚いだけあって実験方法や歴史なんかもしっかり記載されている。


でもそれは許されるのだろうか。


最先端の科学には、最先端の倫理が必要だと大学で習った。

この世界の倫理はこの本についてこれるのだろうか。

俺は科学や工学はわかっても、倫理なんて教えられない。


答えは出せない。


自分の進路に迷っているのに、今の俺には関係ないことを考えて、ごまかして、ここ最近は夜になると悩んで寝ることが多い気がするな・・・


次の日の夜、団長の号令によって、あと一週間もしないうちに帝国を出発することが伝えられた。

それまでに結果を出さないとな。


しかし、表立ってやることがあるわけではない。

結局、図書館へ向かうのだった。


図書館の中で本を見渡す。

本の数が多いわけではない、似たような本を除くと一般人が読めるものは少なかった。


昼前には図書館を出ようとした。


「あ~れ、うまく光らないな」


図書館の管理人が魔石ランプに光魔石を入れていたが光っていなかった。

この図書館には入口に受付を行っているおじいさんがいるのだ。

また魔石ランプは光の魔石を使って、光る道具だ。


ちなみに魔石ランプに使われている魔石は中純度程度の魔石が使われているが、一度発光させると数時間は光っている。


その発光には得意不得意があった。

発光の度合いが弱かったり、発行するまで遅かったりする。


「どうしたんですか?」

俺は、なんとなくおじいさんに声をかける。


「いや、光が弱くなったから、変更しようと思って魔石を変えたんだけど、なかなか光らなくてさ・・・君わかるかい?」


「少し見せてもらってもいいですか?」


商団でもこういうことが、たびたびあった。そのたびに直してきた。

今回も、物によっては直せるかもしれない。

よく観察してみる。


ランプは典型的な構造をしていた。

箱状の形状で、中央にいくつかの光魔石を配置し、三角形のくすんだガラスを複数枚つけたものだ。

光の魔石が発光し、その光がガラスで拡散される作りをしている。


ランプの魔石を接続する部分や魔石同士接続する部分をよく見ると、くすんで、ボロボロになった魔石のかけらが大量についていた。

これをふき取り、軽く魔素を流し込むとキレイに光りだした。


「おお、助かったよ。なかなか光らないから結構困ってたんだよ。」


あくまで予想だが魔石はバッテリーみたいな能力も持ち、使い続けると劣化していき最後にはいくら魔石に集中して魔素を流し込んでも効果を発揮しなくなり、ボロボロに崩れる。

また、劣化した魔石が残っていると効果が弱まったり発動しなくなる。劣化した魔石が触れているだけで全体として脆弱化する。中々厄介な現象だ。


「いやー魔石に詳しいね。おじさんはすっかりわからなくなったよ。もう年だね」


「いやいや、まだまだですよ。これも結局は知っていれば、すぐに直せますし」


「もうちょっと便利になってくれたら生活が楽になるのにね。」


その言葉を聞いたとき、なにか頭の中で、すっと風が吹いたようだった。

昔、大学で学び始めた頃ちょっと怖めの教授に何のために工学があるのかと、問われたことがある。

それを思い出した。


「ありがとうございます。いいものを思い出させていただきました。」

静かに、でもはっきりとお礼を言っていた。


「? 何のことかわからないけど、兄ちゃんよくここに来て熱心に勉強してただろ、どこかの研究所にでも入るのかい?まあ頑張ってくれや。」


「はい、それでは今日はこの辺で失礼します。」


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