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オタク、線をまたぐ  作者: 物理試す


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121/223

ニッホン3

「タロウ様、リルカ様。よくぞおいでくださいました。科技長の元へご案内いたします。」

俺とリルカは初日に本殿を訪れてから2日後、再び巫女さんに呼び出された。


本殿の端の方。立派な和風の建物があり、その中へと通された。

中は大量書籍に、実験道具のような器具がところ狭しと並んでいる。


施設の奥へ進んですぐ、よぼよぼのお爺さんが一人立っていた。

いや、よく見るとそこそこ年齢のいった人々が動き回っている。

何となく、他とは違った雰囲気を感じる。

「ほう、この方がタロウ殿 タカガネ殿がおっしゃられていた迷い人ですな。お若いですなぁ。」

「はい、キサイ様。ご予定通りタロウ様とリルカ様をお連れ致しました。」

紹介に合わせて頭を下げる。

科技長って言ってたっけ?


「ここから私が引き継ぎます。もう下がっていいですよ。」

その言葉と共に巫女と呼ばれる人は気配を感じさせないように下がって行った。

「いやはや、堅苦しくてお疲れでしょう。ささっこちらへどうぞ。」


優しい笑顔を見せ、キサイと呼ばれたお爺さんは畳の敷かれた部屋へと俺達を案内する。

目の前にはちゃぶ台が置かれており、お茶が出された。

何というか、あまりにも和風過ぎて、現実感があまりないな・・・


「何だか、周りとは随分と雰囲気が違いますね。」

リルカは出されてお茶をさっそく飲んでいる。俺と爺さんの話には我関せずといった感じに見せかけてしっかりと聞き耳を立てている。

「そりゃあ、簡単なお話ですよ。私が堅苦しいことが嫌いですからな・・・あまりこの国では歓迎されませんね・・・私としては魔石の研究ができれば、それ以上の幸福はございません。」

「研究熱心なのですね。」どこからともなく親近感がわく。

「単に他のことに無頓着なだけなのかもしれません。おかげで政府の者からはいいように思われていないみたいですな。あそこはしきたりを重んじますから。」

「そうなんですか?私たちはこの国についてあまり知らないので、そう言った印象は持っていないんですよ。」

「まぁムリもありませんな。この国は他の国と交流を持とうとはしませんからな。私たちも外の情報を手に入れる機会が少ないもんですから、こうやってお話できるのは非常に楽しいのですよ。」


この人が俺達をここに呼んだ理由がよくわからない。少し踏み込んでみるか?

「なるほど、だから俺から情報の抜き取りたいと?」

「いやはや、そのような気概は微塵もございませぬ。今は単純に老いぼれたジジイが若者とお話をしたかっただけにございます。そんなに、警戒されんでも大丈夫でございますよ。・・・まぁ確かにいつまでも与太話をしているわけにもいきませんな。」

「気を悪くされたら申し訳ありません。私たちはまだ、皆さんの真意を測りかねているのです。我々のような一介の冒険者たちに一体何を期待しているのか・・・」

「ふむ、確かにもっともな疑問かと思います。そうですね。大きく分けると2つ・・・いや3つあると言えますな。」

「やはり、勇者伝説に関することではないのですね?」

「いかにも!いや、そう言い切ってしまうのは語弊がありますな。正確には勇者伝説の事も知りたいというのが正しい解釈となりますな。」


勇者伝説の事も?一体何を知りたいというのだろう・・・

「他二つを聞いてもよろしいですか?」

「ふむ、特に制限はされていないから問題なかろう。しかし、今から話すことを公にはしないでくださるとありがたい。私の角が立ってしまいますからな。」


そう言うとキサイは何と変声の魔石を取り出したのだ。

ぶつぶつと何かを話し出すと変声の魔石から、いつも見ている幾何学模様が浮き上がりやがて魔石から半透明の膜のようなものが浮き上がり、部屋を包む。


「こ、これは?」

「これは私の魔術になります。名付けて操音の魔術。ある一定空間の音を操ることができるのですよ。」

自分以外の魔術使いを久しぶりに見る。その効果に驚嘆するばかりであった。


「すっごい~どうなってるの?これ」

リルカも同様に部屋に広がった空間に驚嘆し辺りを見渡す。どころか、身を乗り出して膜を触ろうとする。服の隙間から肌が見えるほど体を伸ばしている。本来の目的を忘れていないだろうな・・・

「詳しい仕組みはまだわかっていないのですよ。しかし昔から、この魔術の使い方について伝えられていてですな、我々は音を制御できるのですよ。」

「我々と言うのは?」

「流石に鋭いですな、政府の上役達ですな。その者たちはこうして会議を行う際に音を制御しているのですよ。さてこちらからも質問をしてもいいですかな?」

「ええ、もちろん。私たちが調べた勇者伝説についてですよね。」

「そうですな・・・まずは何故貴方が勇者伝説についてしらべているのか、聞いてもよろしいですかな?」

「それは・・・」

俺はここまでに集めた情報、それから旅の目的を話した。キサイは自慢のひげをなでながら話を聞く。


「ほほう・・・元の世界と行き来する方法ですか・・・確かにそれは大変興味深いですし、関連性を求めるならば、勇者伝説と言うのは適当ですな・・・しかし、今までに元の世界に帰ったという記録はありませんな」

「そう・・・ですか・・・なかなか思うようにはいきませんね」

「ただ・・・気になることはございます。タロウ殿は’天の黒目’という言葉を知っていますかな?」


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