アラスオート-12
そうだイアンの実家は商家だったか・・・
失われた腕を見て少し気分が落ち込む
「タロウ君に助けてもらったお礼もまだだったね。僕の顧客第一号として、うちの商家にきてくれないか?安くしとくよ。」
イアンは何でもないかのように笑顔でふるまう。
「もう実家に帰られるのですか?」
「ああ、この腕じゃあ、さすがに戦場に出ていくことはできないかな・・・ああ、君のせいじゃないよ。」
失われた腕を見つめながら、神妙な顔をしていると、
「えぇ~良いんですか!」
リルカが飛びつく。
イアンの提案は渡りに船だと思う。提案を受けようかな・・・
しかしコイルは簡単にうなづかない。
いつの間にか、リルカの前に出る。
「俺達の業界では甘い話ってのが一番危険ってのは通説なんだけどなぁ」
簡単に話に乗ったリルカはすぐにㇺッとする。
しかし、イアンはすぐに苦笑いをしてネタ晴らしをする。
「いや、勘違いさせて悪いね。でもだます気は無いんだ。お礼をしたいっていう気持ちや値下げする話は本当だよ。ただ一つお願いがあるんだ。」
「そのお願いってのは?」
「簡単な話だ。その馬車に僕も一緒に乗せて連れて行ってほしいだ。」
ここアラスオートは東西に大きく分布した国だ。
この街は、東側に位置しており、首都がある。西側には基本的に農場や採掘地が広がっており、さらに物品や西側付近にある町から来た品の取引をしている大きな街がある。
イアンの話ではその街に実家の商家があるそうだ。
そこまで行くには、かなりの距離を移動しなければいけない。
比較的治安は落ち着いているものの、完璧に安全とは言い切れず、野盗や猛獣に、亜獣も現れる。
基本的には移動時に傭兵を雇ったり皆で移動して巨大な一団となって移動する。
イアンの話を聞いていて、疑問が湧き上がってくる。
「イアンの話を聞いていると俺達よりも、もっと強力な一団についていった方が安全なのでは?」
「はは、タロウ君も冗談がうまい。今、西側に移動する一団で君以上に察知能力と戦闘能力がある人はいないよ。」
そう言われてきょとんする。俺はそんなに強いのだろうか?
なんとなく自分の手を見つめる。
リルカやコイルも小突いてくる。過剰評価な気もするが・・・
何はともあれ、方針は決まり、俺達3人に追加してイアンも一時的に旅に加わることになった。
西の街まで喉かな平原が続く。
平原では定期的に大規模な農園や地下埋設型の採掘地が現れた。それぞれの場所では多くの人々が熱心に作業を行っている。こういった光景は、元の世界でも見ていた景色だ。なんとなく懐かしい。
そして、やはりというべきか、野盗にもよくあっていた。
アラスオートの街にはいるとき見かけた、どこまでも続く長い塀は意外とと言うべきか、当たり前と言うべきか、非常に低い作りになっていて、特に意味をなしていなかった
そんなものだから猛獣や、野盗は夜になるたびに、俺の探査魔術に引っかかり、電気トラップにかかった。
方法としては事前に鉄心をまき散らし、彼らが、それを踏んだタイミングで雷の魔術を発動。
すると適度に調整された電圧により、痺れて動けなくなるのだ。
単純な話が設置型のスタンガンである。
これが意外と効率がよく、安全なのだ。難点は昼夜逆転しがちなことや、眠りが浅くなりやすいことだろう。
捕まえた猛獣は食料になったり、野盗たちは採掘場や、農場に駐留している、小規模な衛兵団に引き渡すのだ。
大変うれしそうな顔をして、引き取ってくれた。きっと彼らが捕まえたことになるのだろうな・・・
ゆっくりと移動し、1週間もせず、アラスオート内の西側に位置する街にやってきた。
街そのものはそこまで大きくはない。
街に入るなり、さっそくイアンの実家に赴くことになった。