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オタク、線をまたぐ  作者: 物理試す


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帝都2

次の日、またオンボロ図書館に向かう。ちなみに今通っている図書館はオンボロではないが、街の中心にある立派な図書館に比較して付けた名前だ。


宿泊施設を出ようとすると、ノエルが話しかけてきた。

「タロウ今日はどうするつもりだ?」

「どうって言っても今日もオンボロ図書館に行こうと思ってたよ。」

「そうか、私たちは店を回っていく。出店を回りたくなったら声をかけろよな。」

手だけで挨拶し、足早に図書館へ向かう。


図書館に行くと目の前のベンチで、昨日、平謝りしていた女性がかなり暗い感じで座っていた。話かけられなさそうな雰囲気だったので、気になりながらも通り過ぎた。


図書館で見たい本に一通り目を通すと、お昼ごろになっていたので昼飯がてら外に出る。

するとまだ朝の女性がベンチでうなだれていた。

流石に気になる。・・・話しかけてみた。

「あのー 朝からここにいますけど、どうかされましたか?」

「はぃ・・・」

目が死んだ魚の目だった。


彼女はフジワラ・エマというらしい、ストレートのブロンドで長髪の女性だ。眼鏡をかけていてグラマラスな方だ。

どうやら爆発の件で研究所をクビになったらしい。話を詳しく聞いてみる。というより聞いてもいないのに話してくる。


「それで自分が起こした爆発事故でもないのに研究室に予算がないのと、エマさんに地位がないためにクビになったというわけですか?」

「そうです。私以外にも新人の方はいて、貴族出身の方がいます。その方は事故を起こしたグループに所属しています。グループごとに予算が決まっているので、本来はその貴族の子がクビになるはずなんですけど・・・貴族の圧力があったみたいクビになるとき所長がこっそり教えてくれました。」

「その、なんというか、大変なんですね。」

涙と鼻水で大変なことになっている。せっかくの美人が台無しだ。


「やっぱり魔石研究とか魔術というのは貴族の特権と考える方が多くいらっしゃるのです。この国は比較的ましな方なんですけど・・・

それでも私はあきらめたくないんです!魔石や魔術は戦闘の研究が多いですけど、そうではなく、もっと市民のために使われるべきだと思うんです。

そうすればもっとみんなの生活が豊かになります。そのために研究をしなければならないのです。」


これは調べた通りだな・・・魔石研究において最も進んでいるのは戦闘に関する研究だ。

「立派ですね、ちなみになんの研究をしていたか、聞いてもいいですか?」

「魔石を用いて馬車を魔力によって自動的に動かすというものです。」

魔力は、魔石や魔術によって発する力の総称だ。ちなみに人が魔石に注入するエネルギーを魔素というらしい。


「馬車を自動的に動かすか・・・」

話を聞いていて、すぐに頭によぎったものがある。

車だ。

俺は大学生で、工学部にいた。もちろん車のエンジンに対する基本知識を知っている。

魔石でエンジンでも作ろうというのか・・・ぜひとも、その研究を詳しく知りたくなった。

「それは素晴らしいですね。私も知りたいです。頑張ってください。」

「はい! こんなことではあきらめきれません。あの研究所で数年間学んで、論文だって認められたんです。空き部屋がここ最近、増えて低賃金で貸し出されています。その一つを借りて自前の研究室を持ちます。」

突然、彼女の目に火がともった。やる気が回復したようだ。と同時に興味が先行しすぎて会話をミスってしまった。

「ありがとうございます。 話を聞いてもらったおかげで気が晴れました。私は目標のためにあきらめるわけにはいきません。今日は本当にありがとうございました。」

そういうと勢いよくどこかへ走り去っていった。いつの間にか人助けは、できたようだ。

肝心の研究内容は何も知れなかったが・・

その日は大変、気持ちよく眠った。


次の日もオンボロ図書館へ向かおうと思っていたが、団長に呼び止められた。

「すまないな タロウ君。今日は紹介したい人がいてね。」

「? かまいませんよ。どんな方なんですか。」

本当は図書館で可能な限り情報を集めておきたいところなのだが・・・

「ああ、フジワラ商会という多くの物品を扱っている商会だ。この国では古くからある商会でこのあたりでは一番大きいな。」

「フジワラですか、、、どこかで聞いたことあるな。」

「まぁ フジワラはここら辺ではそれなりに多くある名だからな。どこかで聞いていてもおかしくはないな。」


雑談をしながら団長についていくと、やたらとでかい洋館が出てきた。団長は、ここの顔なじみだったらしい。門番に軽い挨拶だけで中へ入っていく。

中に入ってすぐ小部屋に案内された。

しばらくすると豪華な妙齢の女性が入ってくる。ブロンドで長髪の方だ。

「やあ、ジャック そいつが魔術使いかい?」

「ああ そうだ雷の魔術使いだ。なかなか強力な使い手だぞ。」

「ふ~ん」

その女性が見定めるように見てくる。

「いや すまない。私はフジワラ・マリー。 このフジワラ商会の10代目の会長をしている者だ。そこのジャックとは昔なじみでね。今でも商品の取引を行っているのさ。」


「初めまして、サトウ・タロウです。成り行きで魔術を使えるようになりました。今は荷物持ちしながら、魔術について調査をしています。」


「聞いているよ。 元迷い人なんだって?」


「!? どうして知っているのですか?」


「私たちが取引しているのは品物だけでは無いってわけ」


ということは

「情報ということですか?」

マリーさんが表情で答える。

何かする気だろうか。自然と体に力が入る。

すると団長が横から付け足しをしてくれる。

「心配するな。お前の魔術は派手だ。いづれバレたさ。それにこいつは我々、市民側だ。」


「そういうことだ。君が魔術使いだと知っている事実も貴重な交渉材料だ。私の娘もせっかくのチャンスを逃したみたいだしな。」


娘? このタイミング、ブロンド、そしてフジワラという苗字

「エマさんですか?」

「そうだ。あの子もまだまだだね。」

あきれたように首を振る。


しかし彼女の近況を知っているはずだ。

「他家の方針に口出しするのは、お門違いかと思いますが、助けてあげないのですか?」

「うちは自分の力で困難を乗り越えさせる方針なのさ、世界はどんなふうにでもなりうる。厳しくても自分で生きていく力が必要なのさ。」

俺は言いたいことはあるが親子が納得しているなら、それ以上は何も言えなかった。


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