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オタク、線をまたぐ  作者: 物理試す


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アラスオート-2

次の日、朝からギルド施設内で勇者伝説に関する情報収集を行う。

この街にも大きなギルド本部があり、アラスオートの各地に支部が点在しているようだ。

しかもこの街は他の都市には見られない面白い政治体制をしている。


王様は存在しておらず、民主制のような形態を取っている。今までに訪れた街の中では一番元の世界に近い形態だ。

今、現在の長はギルド長も兼任している。まるでギルドが作った街のようだ。

ちょっと調べてみると街には巨大な図書館も存在しているがどうやら、それなりの立場がある人から紹介状を貰わないと入ることができないようだ。

と、いう事で今は掲示板を見てなんか立場の高そうな人が依頼を出していないか捜索中だ。依頼達成の報酬として紹介状がもらえないかと考えている。


コイルにリルカをついて行かせて、別の方法で情報収集を手伝ってもらっている。元々コイルは情報屋をやっているのでこの手の事は得意だろう。

ちなみに現在まで勇者伝説に関する目ぼしい情報は得られていない。この街ではおとぎ話のような話もないようだ。

こっちはこっちでできる事をやらなければ・・・それにしても平日の昼間だというのにギルドにいる冒険者の数が異様に少ない。掲示板にも未処理の依頼が多数貼られていて、かなりの日数が経過してしまっている依頼もある。

どうしたというのだろう?まるで冒険者や傭兵たちがいないみたいだ。

やはり何かおかしい気がする。こんなに大きな街の中心ギルドに人が少ない。そんなことはあり得ない。

「この街に冒険者がいないのか?」

ぽつりと掲示板を見ながらそうつぶやいた。


「それはちと違うな。皆にとある依頼を出している。」

俺の疑問に答えるように後ろから声がした。

とっさに振り返ると長めの無精ひげを蓄えた恰幅のいい男が立っていた。

その男は見た目の年齢の割に肩回りはがっしりとしていて、とてつもない力を秘めているんじゃないか?と思わせるようないで立ちをしている。立派な制服に大量の勲章。一目でえらい人だとわかる。

「挨拶が遅れた。私はアグナル・ロール。気軽にロールとでも呼んでくれ。ここら辺では見ない顔だったもんだからな気になって声をかけのだ。」

「タロウです。所属地は決めず旅をしながら依頼を達成しています。勇者伝説について調査をしています。」

「タロウ?・・・どこかで聞いた名前だな・・・。まぁいいか、それにしても勇者伝説とは、また珍しい物をしらべておるなぁ。」

「はは・・・よく言われていますよ。この街にも何かあると調査はついてあるのですが、どこに何があるか分からなくて、ロールさんは何か御存知ありませんか?」

「勇者伝説について・・・か。ないことはないなぁ。」

おお!これは運がいい。何だか紹介状を書いてもらえそうな人にコンタクトをとることもできたし、勇者伝説にいきなり近づけるとは。

ロールさんの顔は何かを思い出したような表情をした。


世の中は甘くない。

都合がいい話には裏があるものだ。

「ぜひ、勇者伝説について教えていただけないでしょうか?」

それまで優しい目で話していてくれたロールさんが鋭い目つきに変わった。

「お前さんも冒険者なら、ここから先は教えられないことぐらいわかるだろ。」

鏡を見なくても自分の目が半開きになっているのを感じた。

「正確には教えても何にも問題はないのだ、勇者伝説なんぞ、いまさらな。ただ人手がほしい案件があってな。ちと手伝ってもらいたいのだ。」

「依頼内容を聞いてみないとお答えできません。それに私たちは3人で行動をしています。仲間を危険にさらすような依頼であればうけることはできません。」

「依頼内容に関しては当然、先に伝える。依頼に関してはおそらく、お前さんの戦闘力だけで充分だ。」

そう言ってロールさんは俺が装備しているクロスボウや魔導ランプに視線を一瞬移した。それにしても俺の戦闘力だけでいいとはどういう事だろうか?

ロールさんと歩きながら会話し、個室に入った。

「依頼内容はとある魔獣の討伐だ。」

「魔獣!?」

「落ち着いて聞いてくれ。今アラスオート中の冒険者や傭兵を集めて討伐隊を編成中だ。相手は牛型の魔獣だと言われている。」

「言われている?はっきり姿を見た人はいないのですか?」

「お前さん達、川の方からやってきたじゃろ。あの川からよく霧が発生するのだ。それがここ最近、非常に濃い霧が発生するようになった。その中に魔獣がひそんでいるらしい。

はっきりと姿を見た者はおらず、ギリギリ生き残った者が見た姿をもとに推察すると牛に近いと言う話だ。・・・もう何人も失っておる・・・全く、戦争が近いというのに正体がはっきりしない魔獣のぞ、厄介なものだ。」

あの霧そんな危ない物だったのか・・・知らなかったとはいえ警戒しなさすぎだな。もしかしてあの探査魔術の反応は魔獣だったのか!?


ロールさんの話だと亡くなった人達の状態を見るに体に大きな穴が開いており、その点からも巨大な角を持っているのではないか?とのことだった。

背中から冷や汗が流れ落ちる。

「まだ相手の情報は何一つわかっておらぬ、だから犠牲者がある程度出ることは織り込み済みだ。しかし街の長として、ギルドの長としてできる限り犠牲者は減らしたい。力のある冒険者で確実に抹殺し一回の作戦で終わらす。そのためにもお前さんの力を借りたい、その閃光の矢使いとしての力を。」

「せ、閃光の矢使い!?」

初めて聞いた二つ名だ。また変な名前を付けられたものだな。

ちょっと恥ずかしい。それに、このおっさん、権力者だと思っていたが街の一番偉い人だったとは・・・

「ど、何処でそのような名前を聞いたのですか?」

「おお、巷では有名ではないか。私は腰のクロスボウを見て思い出した。たしかバチバチという破裂音を立てながら光り輝く一閃を放ちどんな魔獣も倒すことができるというところからついた名前だと聞いておるぞ。まぁこういう名前には尾ひれがついて回るのが常だからな。ある程度間違いもあるだろう。だけどお主に二つ名が付くくらいに実力があるのは確かだな。」

こんな所まで名前が広がっているとは、しかもとんでもない嘘までついて回っている。

これはしばらく身を潜めて行動したほうがいいか?

「魔獣討伐については仲間と相談させてください。」

「ふむ、討伐した暁には報酬とは別に私が知っている勇者伝説やこの街にある図書館への紹介状を提供しよう。そして報酬はこのぐらい出そう。」

そう言って示された羊皮紙には、かなり魅力的な報酬が示されていた。

これだけでしばらくは遊んで暮らしていける金額だが、正体不明の魔獣を討伐しなければならないというのはかなりのリスクだ。

よく考えないと。


宿泊地に戻り二人に話す。

ちなみに二人は今日の収穫は無かったそうだ。

「魔獣と来たか・・・しかも何もわからない相手となると厳しいな。」

コイルは腕を組んで悩む。リルカは魔獣と言う物の危険さを何となく理解しているぐらいで実際のところ分かっていなさそうだ。

「確かにリスクは大きい、でも今回は俺達以外にも街中から冒険者が来ているらしいし、俺の配置は後方からの魔術支援を予定されている。だから勝算はまだあると思っているんだ。・・・正直、受けてもいいと思っている。」

俺は今までの魔獣との戦闘を思い出していた。

確かに魔獣はどいつもこいつも強力だったが、何とか勝利を収めることができていた。今回も何とかできるのではないだろうか?

そんな、根拠は自分の経験しかない自信があった。

もちろん油断は禁物だ。できる限り調査を行って情報を集めてから挑みたいところだ。

「まあ、実際に戦うのはお前だ。最終的にお前が決めろ。ただし、絶対に死なない事だ。」

「うん、私もそれに賛成!」

「了解、依頼を受けようと思う。今のところ情報は得られていないし、せっかくのチャンスは物にしていきたい。」

そうして俺達は魔獣討伐に加わることとなった。二人も情報や物資など支援をしてくれることなった。

さっそく次の日ギルドに赴いてギルド長に伝えたところ大変よろこんで受け入れられた。

まずは周辺の調査という事で、それまでは準備をして待機となった。

数日後、ギルドから呼び出しを受け、魔獣の調査へ出発する。


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