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ルーナ村-5

夜、目の前には手持ちの低級魔石がずらりと並んでいる。同室の窓際では酒を飲みながらコイルがつまらなそうにこちらを見ている。

酒盛りの相手が減ったから一人で月を見ている。


俺自身が見つけた劣化魔石への魔素移動。見つけてから何度も練習してかなり使えるようになった。

今、左手に低級の火魔石と劣化した低級の火魔石、右手に適当に選別した光の魔石を持つ。魔石の3つ持ち。

片手に持った低級魔石同士を反応させて魔素移動を行う。魔石をもっている左手が熱を帯びる。

そして右手の光魔石を魔素移動を行っている近くに持っていった。

しかし、うんともすんとも言わず魔素移動は終わった。

「ダメか・・・光の魔石なら反応が良いかなと思ったんだけど。」

「何やってんだ?タロウ?」

「いやな、魔素は体から溢れているかもしれないと思ってな、それをどうにか測れないかな、と試してはいるんだけど上手くいってないんだよね。」

「魔素を検知するだって!?・・・そりゃ無理だな。そんなことは世界各国が昔から挑戦して無理だったんだぜ。そんなことができるようになれば各国の重要な戦力である魔術使いの存在がバレバレだ。」

「つまり魔素を検知できれば逆に有利になれるから躍起になって調査したわけか。」

「そう言う事。だけど何にも見つけられなかった。いや、少しは分かったことがあったな魔獣が俺らの使う魔素を検知しているってことだ。」

各国が挑戦しても見つけられない事か。いくら元の世界の知識を持っていたとしても、どうすればいいかわからない・・・中々、骨の折れそうな挑戦だ。

その後も色々と体のどこから出ているかもわからない魔素を検出しようと試みたが、全く何も分からなかった。


次の日から村人の魔素移動の訓練を手伝い、隙間時間を見つけては魔素の検出ができないか調査する日々が続いた。

「タロウお兄ちゃん、これを元に戻して・・・」

魔素移動の練習をしていると、

中途半端に活性化した魔石や半分だけ色が違う魔石が量産される。技術が未熟で完璧に移動できないのだ。俺はそれを元に戻してやり、もう一度練習できるようにしているのだ。というか、前回も買いに行かないで、こうやって戻してあげればよかった。


「ありがとう」そう言って女の子は皆のところへ戻っていく。

村の魔素移動を練習している人々はそれぞれが習熟度を上げ、どんどん魔素移動ができるようになっている。加えて何人かは完全に魔素移動ができるようになってきた。

これなら数日中にも十分な人数をそろえられるだろう。そうすれば魔石を長く使っていける。

空を見上げふと思う。次は何処に行こうか・・・。


勇者が残した日記によるとここから南の街、アラスオート連合国。

この世界において五つある大きい国の一つだ。最も南に位置している。

しかしこれと言って目立った噂を聞かない国だ。どんな国なんだろうか?

勇者は伝説の魔獣討伐のためにこの国にも訪れている。

という事はこの国の近くにも遺跡とかあるのだろうか。プエトジによって少し調査をしてから向かおうか。


数日たち、その日もいつも通り練習を終えた。

練習を終えた後は魔素感知の方法を考える。

しかし全く進展していない。今回は人の命がかかっているわけでもないし、この後も気楽に研究していけばいいかと考えていたが、流石に全く何もわからない日々が続くと気分が落ちてくる。

気分転換のために、しばらく村の中を歩いているとリルカが空を見上げて黄昏ていた。

そういえばここ数日は村人や子供達の相手をしていて、全く話していなかったな。

「数日ぶりだな、最近は何してたんだ?」

彼女はチラッと視線を向けると何もなかったように、また空を見上げた。

「何もしてないよ。きっとこれからもやることが無い。」

「どうしてそう思うんだ?」

「だって私はこの村での役割が決まっているもの・・・」

確かに俺がこの村に来た時、彼女はとある目的で俺の寝こみを狙った。

おそらく彼女は今後、村への来訪者に同じことをやるのだろう。彼女は今までそのことに全く疑問を持っていなかった。

しかし冒険を通して、村や町の外へ赴き、外の世界を知る喜びを得た。

元々活発で様々なものに対して興味を持つ子だ。また冒険をしたい、他の街や人々の事を知りたいと思ったのだろう。

でもその方法が分からないのだ。こういう時、どうすればいいかわからないのだ。

「他にやりたい事とかないのか?そう言えば前は海が見たいって言ってたな。海に行こうとは考えないのか?」

「そんなの無理だよ。どうすればいいか分からないもの。こんなことなら冒険なんてしなければよかったな~。」

遺跡調査がよほど楽しかったみたいだな。せっかく持ったその気持ちを失ってほしくない。

それに俺自身も成り行きとは言え連れ出した責任というのを少なからず感じていた。だから何かできないかと考えていたのだ。

問題はない。

この村には一つだけ世界のどこでも旅に出る方法がある。

「リルカ魔石回収を行ってみないか?」

「魔石回収?そう言えば今は村から回収に出ている人はいなかったはずだけど・・・私、戦えないよ?」

「戦闘を行う事だけが全てじゃない。コイルのように情報を集める仕事もあるし、リルカは確か少しだけ回復魔法を使えたよな?それを鍛えて冒険で傷ついた仲間をすぐに回復することだってできる。つまり今から何にだってなれるんだ。だから試してみないか?」

「なんにでもなれる・・・分かった。まずはお父さんに話してみるよ。」


二日後のことだった。

目元を腫らしたリルカが俺を呼びに来たのは・・・

「タロウさん、一緒にお父さんの所に来て、お父さんが、村長が呼んでいる。」

すぐに村長の自宅へ向かうと、リルカの父である村長が鎮座していた。明らかに不満があるといった表情をしている。話は分かっているようだな。

村長に促されて目の前に座る。斜め後ろに距離をとってリルカが座る。

「困りますなタロウ殿、娘にはこの村でやらなければならないことがあるのです。いくら村に尽くしてくれているタロウ殿でも勝手なことはなさらないでいただきたい。」

「勝手な事は何のことでしょうか?彼女は村のためを思って行動しようとしているのです。それを考慮していただけませんか?」

「ダメだな。娘はまだ幼い。それに戦闘経験もない」

「だからこそ、他の村人と一緒に行動させることで経験を積ませるのです。魔石採集や外の世界に対して経験者が増えることは村にとっても損はないはず。」

村長は一瞬、黙る。やはりこの人は損得をちゃんと考えられる人だ。

今、俺に指摘されて一瞬迷ったんだ。つまり自分の娘が魔石採掘で働けるか考えている。後は感情的な部分か・・・

「それでもダメだな。貴重な回復魔石を使える者でもある。それこそタロウ殿が教えている魔素の移動だって練習次第でできるようになるだろう。それに魔石収集には危険が伴うからな。」

「つまり村にとって十分な人数の魔素移動ができる者がいる。もしくは村の中で回復魔石を使える物がいれば一考の余地があるという事ですね?」

「確かにそうだが・・・君自身が全員が魔素移動の技術を獲得できるかは分からないと言っていたではないか?」


俺は村長に魔素移動の技を村人に教える話をしたとき、どれくらいの者が使えるようになるのか聞かれていた。その時は多くの者が使えるようにはならない。少なくとも一人は使えるようにすると話していた。

それから考えると確かに俺の意見は嘘を言っていることになる。

「確かに現状のままでは難しいでしょう。ですが、今教えている村人たちが全員使えるようになったらもう一度考え直してくれませんか?」

「確かに、それならばもう一度考えよう。」

これ以上話しても無駄だと思われたのか、それともできないと思われているのか定かではないが話し合いはそこで終わった。


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