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オタク、線をまたぐ  作者: 物理試す


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ルーナ村-4

「それはあいつに倒されちゃったからじゃない?」

リルカは後ろで横たわっているトカゲの魔獣に指をさす。

確かにこれほど大きな魔獣が街の中で暴れまわっていたら、街は壊滅状態になって勇者の使っていた盾に描かれている模様や液体魔石の利用方法が伝わらないかもしれない。


でも液体魔石を使った知識や知恵が伝わらないほど壊滅的な破壊が起こるだろうか?何人かは逃げることができたのではないだろうか?

そんなことを考えていると、とある事を思い出した。


伝説の魔獣だ。

確か勇者たちは伝説級の魔獣を討伐するためこの地を訪れていたのだ。

ならばあの竜のようなトカゲは伝説になっている魔獣なのだろうか?今となっては真実は分からないが、エントシで見たあの白いトラの魔獣。あれと同じ雰囲気をこいつからは感じる。


伝説級の魔獣。街を破壊し、勇者と呼ばれる人物でなければ倒すことができなかった魔獣は、それほどの存在なのか!?底知れない恐怖が一ミリも動かない目の前の魔獣から伝わる。

勇者はコイツをどうやってここに押し込めたのだろうか?あのトカゲからから伸びている不思議な模様は封印でも、しているのだろうか?分からないことだらけだ。

迷っていても仕方がない。一つずつ調べていこう。おれは時間の許す限りスケッチを行ってこの場所の状態を記録していく。


錆びた小盾は台座に埋め込むように固定されており簡単には外せそうになかった。盾に描かれた模様は途切れていて効果を発揮するかどうかわからなかった。

魔素を流すのは無しにした。


それから数日かけて遺跡最奥部の調査を行い、結局のところ分かったことは部屋の広さはトカゲの魔獣がもう一体入りそうなぐらい広かった事、トカゲの魔獣は触れたり、大きい音を出した程度では全く反応しない事、生きているかどうかは分からない事だ。

魔獣にはいくつかの傷があり何か鋭いものに切られているみたいだった。この切り口、硬い鱗を持つトカゲの魔獣が自然に体をぶつけた程度でできるとは考えにくい。

やはり勇者との戦闘があったのだろう。

切り口からは魔石がまるで養分を吸って成長するかのように生えていた。

魔獣と勇者との関連は結局のところ資料となるような文章が一つも残っていなくて正確には分からず、状況から推測するだけとなった。

次に魔獣と部屋をつなげている不思議な模様は良く観察してみると、一定の法則で書かれているようだ。

こちらの世界の文字とも取れそうだし、ひらがなとも取れそうな色々混ざった文字列で構成されている。更にこれはこの土地でとれた液体魔石を使っているようだ。液体魔石のサンプルを持ってきていて良かった。

つまり今わかっていることは勇者はこの地を訪れ強力な魔獣と戦闘したが倒しきることはできず俺達の知らない技術を使って魔獣の封印?を行ったという事だ。


液体魔石は魔素を流す効果に加えて、何らかの文字列を並べることで別の効果を発揮するのか・・・

これは大発見だが肝心の仕組みは全く分からない。面白い現象だし、試行錯誤を繰り返して何とか利用できるようになりたいところだ。


さて、数日かけて調査したおかげである程度、知りたいことはわかった。

まず勇者は伝説級の魔獣を倒して回っている事で確定した。

彼は次にさらに南の街に向かっている。彼がどうなったのか知るためにも俺もさらに南へ向かうべきだろう。

現状では封印されている?魔獣はどうしようもないし今まで通り扉を閉めて眠っていてもらおう。

グラムが定期的に村の代表として確認作業を行うとのことだ。

勇者の盾も持ち出したりせずそのままにしてきた。外しても問題はなさそうだったが持っていたところで使い道は無いし荷物になるので詳細にスケッチをしただけにとどめた。

「はぁ~今日で遺跡調査も終わりか~」

リルカは頭の後ろで手を組んで、少し寂しそうに話す。

予定ではこの調査が終わったら、彼女はまた村での生活を送ることになる。

果たして彼女はそれを望むのだろうか?あの夜は勢いで外の世界へ連れ出すなんて言ってこの調査に同行させたけど、この後何もしないなら余計なことだったんじゃないかと思ってきたぞ。

だからと言って何かいい方法が思いつくわけではない。ぐるぐると考えているうちに村につく。村についてグラムに呼び出された。

「タロウさん。今日で遺跡の調査を終えるそうですが・・・」

「心配するな、村人たちが魔素を移動させる技術を使えるようになるまでは村にいるよ。」

「ありがとうございます・・・私がこんなことを言うのも変な感じなのですが、どうしてここまでしてくれるのですか?」

確かにグラムの疑問はもっともだ。

「ん~どうしてと言われると困るとこだが、強いていうならば俺は中途半端なことは好まないんだ。あとは困っている人を見かけたら助けたくなるだろ?おせっかいなんだろうな俺は・・・」

「いえ、安心しました。お金を求めることもない、女を求めることもない。何も望まない貴方は何を求めて生きていくのか気になったものですから・・・貴方の普段の行動から納得できました。」

「そう思って貰えるなら普段の自分に感謝だな。」

不意にほめられた?少し驚いてしまう。


何はともあれ約束通り村人の成長を見守ってから次の街へ向かう予定だ。

後日、さっそく村人達の修練を開始する。

村人たちの魔素移動はあまり良い成長度合いではなかった。

劣化している魔石と劣化していない魔石をくっつけて魔素移動をしているが、どれもこれも完ぺきにはできていない。途中で止まってしまったり中心部の色は変化するものの表面は変わらなかったりとまばらだ。

見た感じ、どの子も魔石への反応性は高いからある程度はできているが何かが足りない。

魔石を使うには十分な魔素と明確なイメージが必要なことは分かっている。しかし明確なイメージについて色々な人に聞いて集めた情報によれば、人によって明確なイメージは若干、異なるという事だ。

それぞれの人に会った適格なイメージに補正することが、効率よく強力に魔石の力を使用する条件だ。

魔石の練習をしている彼らには頑張って自分なりのイメージをつかんでもらうしかないか・・・どうにかして共通のパターンを教えてあげられないだろうか?

そんな風に悶々と考えていると袖を引かれる。引かれた方を見ると魔素移動を練習している村人の中で最も幼い女の子だった。

その子の体には不釣り合いなほどおおきな魔石を持って皆と並んで魔素移動の練習をしている。

年齢が幼いせいか魔素への反応はいいがうまくいっていない。

「なあ、魔石を使うときどんなイメージを持っている?」

「ん~ お腹から暖かくなる感じかな?あんまりわかんない。」

「そうか。じゃあ、そのまま魔石を使ってみてくれないか?」

その子は目の前で魔石をしっかりとつかみぐっと力を込める。

この子がどの程度、魔素移動ができるかは知っていたので魔石の変化ではなく魔石を使っている女の子に集中してみる。


女の子の中の魔素移動を感知することは難しい。近くにいると何となく体の中を魔素が移動している雰囲気は伝わってくるが注意しておかないと気づけないレベルだ。

それにしても近くにいれば魔素の反応は感じれるんだな・・・今まで気にしていなかったけど集中するとやんわりと分かるみたいだ。


魔素の一部は意図せず外に漏れだしているという事になるのだろうか?それとも体の中の魔素を何らかの感覚がとらえているのか・・・

その時、ふと魔術使いと魔獣が惹かれあうという話を思い出した。そうか、魔獣たちは魔石を使っている人たちのあふれ出ている魔素を感知しているのかもしれないな。

なら、俺もこのあふれ出た魔素を感知できないだろうか?

電磁波と光の魔石をうまく使って探査魔術を作ることができた。同じように上手いこと魔石を組み合わせて使うことができないだろうか?そもそも魔素とは何なのだろうか・・・


考えに耽って締まっていて目の前で魔素の移動を不完全に終えた女子がこちらを見ていることに気づけなかった。

「ああ、すまない少し考え事をしていたんだ。そうだな・・・」

そこからいくつかイメージを伝えて何度か魔素移動を試してみたが微々たる変化はあったものの大きく能力が上昇することは無かった。

その日の夜から魔素を感知する方法の研究が始まった。


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