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帝都

帝国が近づいてきた。

初めて来た待ちなのに、遠目からでもはっきりと城壁が見えるあたり、とてつもなく大きい街であることが分かる。

よく帝都なんて言い方をしている人もいる。


帝国まで続く道は石造りの、丈夫なものに変わっていき、通行人も自然と増えていった。

検問が厳しい帝国の町中に、やっとの思いで入ると大変にぎわっていて、かなりの人々が往来している。

あちらこちらで出店もあって賑わいを見せている。


「ここはいつもこうなんですか?」

上司のユーリに聞いてみると、今は新女帝が就任したそうだ。

それから一年をかけてお祭り状態なのだそうだ。

非常に栄えているようでも、数年前に比べ、人の数は減っているらしい。

聞いた話だと新女帝は若すぎるため、数人の家臣が手強くサポートしているらしい。

その体制に不満を持つ貴族がいるという噂話だ。

噂話だが火のないところに煙は立たぬと言うからには、やはり何かあるのだろう。


帝国でも宿泊施設を借りて過ごす。その日の夜、団長による号令を受けた。

「今回、帝国では物資補給を主に行う。

売り出しはあまりしない予定だ。補給は顔なじみのところに行く。一部の人は暇になるだろう。そこで領内に限り自由行動とする。しかし事件に巻き込まれないようにな。」

若い人間を中心に自由行動が認められた。見分を広めるのも大事とのことだ。先進的な事だ。

ノエル達、護衛隊は闘技場があるからそっちに行ってみるらしい。


俺はというと、この帝国には図書館があるらしい。

こっちの世界に来てまともな資料なんて、なかなか手にすることができなかった。ようやくそれなりの情報をつかめるかもしれない。

俺は、期待に胸を膨らませながら図書館へ向かった。



図書館の近くに行くと学者っぽい人がたくさんいる。心なしか身なりもしっかりとしている。

周辺には実験施設だろうか、いびつな建物が立ち並び、たまに爆発音みたいな音が聞こえる。

大丈夫か?・・・


図書館は、周囲の建物に比べ大きく大量に本が貯蔵されているようだ。

さっそく入ってみると・・・

入れなかった。


なんでも、推薦書?会員書?なるものが必要らしい。

どちらもすぐに手に入れられるものではないし、手に入れ方もわからない。

ということで色々食い下がって情報を聞き出すと、一般市民でも閲覧できる図書館があるらしい・・・めんどくさそうに教えてくれた。


行ってみると、なんともみすぼらしい建物が出てきた。

普通の二階建ての家だが、一階を図書館としているみたいだ。

建物の中に入ってみると、たばこを吸っている管理人兼受付のおじさんがいるだけだ。

おじさんの話だと、持ち出しは禁止だが、好きなように読んでいいらしい。と言っても3棚しかない。

まぁ読めないよりましか、貴重な情報源だしな。

魔術に関することや、歴史、地形、言語、おとぎ話に至るまでこの世界に関することは手当たり次第に読んでいった。

もちろん一日で読み切れるわけはない。

数日は通うことになりそうだ。一日中駆けて大学で培った集中力をフルに発揮して読んでいく。気づけば日が沈みかけていた。

今日のところはこれくらいにしよう、そう思い図書館を後にした。


朝、爆発があった建物の前を通りがかると数人の人々がうつむいている。

一人の女性が平謝りしている。あの娘が事故をおこしちゃったのか・・・

後ろ髪を引かれながらも通り過ぎる。


宿泊施設に帰り、団のみんなと夕食をとっていた時、ノエルに軽く大事なことを言われた。

「タロウ、町の中ではどんなに小さくても魔術を使うなよ。」

「なんで?」

「魔石や魔術、魔法というのは基本的に金持ちのものだ。

そこで一部の金持ちや貴族たちが崇高な力とか言い出して選民思想をもっているってわけ。

だから見つかると厄介だぞ。」

「なるほど、注意するよ。」

ノエルはいつも通り、おせっかい癖が出たのか、なんでも教えてくれる。


食事が終わり自分の部屋に戻る。

図書館で調べてわかったことの一つに、この世界はまだまだ貴族社会が主流で、文明や経済・技術力は元の世界と比べて未熟だ。

面白いことに人々の暮らしはようやく中世を抜けたか?といった感じなのに魔石による生活レベルの高さや貨幣により、ところどころ産業革命前夜みたいな物や事がある。

ずいぶんとちぐはぐな世界だ。


今日調べたことを整理する。収穫物の中には世界地図があった。どれほど正しいか・・・分からないけど、とても大きな収穫だ。


どうやら、この地図によると、この世界は大きな大陸になっているようだ。周辺に小さい島々が確認されている。

どれほど大きい星か、分からないけれど大陸が一つしかないというのは考えにくい。周辺の島々もおぼろげだ。

おそらくまだまだあるのだろうが、見つけられていないといったところか・・・


他にも確認できただけで、この帝国を含めて大きい国が5つあった。

二つの山脈に囲まれた、ここイルルリス帝国

北の山脈を超えたところに位置するリベシア王国

西に位置するニッホン合衆国

赤道に位置するプエトジ公国

南に位置するアラスオート連合国

陸地全土に人々が広がっていることが分かる。ちょっと気になる国もある。


しかし魔術にしろ、元の世界に変える方法にしろ、情報集めは大変そうだ・・・

それでも、これだけ国々があるなら元の世界に帰る手立てがどこかにあるかもしれない。

大変だが可能性の高まりに心が躍った。


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