移動しました。
「よし 完成した。」
肩から力が抜くように息を吐く。
俺は自室で大学の卒業課題を必死に作っていた。
机に張り付いて3日も経つ。
日程的には余裕があった。だけど最後の課題ということもあり力を入れて製作していた。
ふと思い返せば物作りが好きで工学部がある大学を選んだ。その大学で過ごしてきて4年目。
色々あったなぁ・・・
モノづくりには材料代がすごく掛かるから、おもちゃみたいな物しか作れなかった。
だけど卒論が終わったら大学院の進学まで時間がある。
この空き時間で、バイトをやりまくって材料費を稼ぐぞ。
最近はあんまりできなくなっていたが、ロボットサークルのオタク友達と遊ぶ約束もある。
俺は完成した資料をまとめながら、今後の予定に思いをはせる。自然と口角が上がっていた。
出来上がった課題を確認して提出し終えたところだった。
突然、自分以外に誰もいないはずの部屋で物音がした。
驚いて、音の方向を見ると昔に買った陶器製のコップと課題製作のために使っていた分厚い物理学の専門書などが宙に浮いていた。
いや、あるはずがない、大きな黒い穴に吸い込まれていった。
あっけにとられて見ていた。それがいけなかった。
気づいたときには自分の体も浮いていた。
俺は声を上げる暇もなく謎の黒い穴に吸い込まれてしまった。
誰もいなくなった部屋には不自然な方向に部屋の物が引っ張られた跡が残っており、いくつかの物が無くなっていた。部屋の主は行方不明となっている。
＊
＊
＊
俺はいつの間にか意識を失っていたようだ。目を覚ますと、どこかわからない森の中にいた。
辺りには一緒に吸い込まれた本やコップ、それに文房具が落ちている。
あまりの事にボーっとしていたが、あたりを見渡して今の状況を把握しようとした。
しばらく考えていた。
これは現実か？
何度も思考をめぐらす。
こんなでたらめなこと、思い当たる現象はない。
すぐに思いついていたが、ありえないと思って頭の隅にその考えを置いていた。
「まさか……異世界転移！？」
そんな馬鹿な、と思った。物語の世界だけだろ！？
でも確かに俺は自宅で卒業課題をやっていたはずだ。
そこに見たことがない、黒い穴が現れて吸い込まれてしまった。
曲がりなりにも大学の工学部で4年間学んだ者だ。あれは、ありえない自然現象だ。
とりあえず辺りに落ちている物を拾って、森の中を歩き始めた。
気温は高くもなく低くもなく過ごしやすい気温だ。季節は春だろうか？よくわからないけれど、すぐにどうにかなることはなさそうだ。
・・・・・・・
・・・・・
・・・
2日たった頃、
現実はアニメやゲームのように気持ちよく、進んではくれない。
俺はまだ森の中にいた。いや完全に迷っていた。
食べ物もどれが食べられるのか、わからないから満足にありつけず、夜はかなり冷え込むが、火も起こせないので暖をうまく取れない。
日に日に、体力を大きく失っていった。
サバイバルの知識は本で読んだことがあったけど、一度も実践したことがない。
素人には知らない事と同然だった。
大きく開けた場所に出たが、体力の限界で倒れてしまった。
ここで死ぬのかな・・・ 色々やりたかった事あったのに・・・
意識が落ちたところで何人もの人達が開けた場所を通ってきた。
倒れた場所は森の中にできた道だったのだ。
人々は倒れている俺を見つけ、相談しすぐに救出を開始した。
異世界系やってみたかったのでやりました。
また初めての長期連載を目指しています。
※活動の再開に伴い、微修正を行っています。
