カレーは香りが命
ワタシは6年前からスパイスを調合してカレーを作っている。そうやってカレーを作っていて不思議に思うのは、スパイスもしくはスパイスを調合したカレー粉に味はない、ということである。
試しにカレー粉を舐めてみると良い、期待していたようなカレー味はしない、何か苦いだけである。せめて駄菓子的なカレーな味を期待しているのに、苦みしかしないのである。しかし、そのカレー粉を他の材料とともに調理すると美味しいカレーになるのだから不思議である。
ではカレー粉は何を担っているのか?それは香りである。
スパイスには、香り・辛み・色合いの三種類の作用があり、味はない。カレーを作る際にスパイスを調合したカレー粉が担うのは香り付けである。
スパイスカレーを作成する際に、最初にホール(スパイスの原型)を油で炒めることで油に香りを移行させるし、更にカレーの具材(肉とか野菜とか)に応じてスパイスを調合してカレー粉を作って中心的な香りを決める。
つまり、カレーは味わっているといより、カレー粉の香りを感じているということになる。飴の味成分が砂糖だけでも香料を変えるだけで味に大きく影響を与えてしまうのと同じである。
上記のように調合されたスパイスの香りでカレーの味が決まるわけだが、調合するスパイスと言われるとテレビCMであるような30種類のスパイスを調合して、というイメージがあるかもしれないが、あんなに多くのスパイスを調合するのは日本くらいである。
本場インドのカレーでは6種類くらいで多くて10種類程度であり、ワタシもスパイスを調合するときはそのくらいしか使わない。スパイスをたくさん調合すると美味しくなるイメージがあるが、実際はスパイスをたくさん調合すると香りに特徴がなくなる(いかにもジャパニーズカレーって香り)し、スパイスが4~9種類くらいのほうが特徴のあるカレーの香りになるのだ。
しかも、肉や野菜などの具材によっても適したスパイスがあるので、猛者になるとその都度スパイスの配分を変えているのだ。実に奥深い。
スパイスをどう調合すればベストなカレー粉が出来上がるのか、となるとこれが分からない。インドでは家庭ごとにスパイスの調合が違うので、これといった定番はないし、スパイスから作るカレーのレシピ本を見ても著者によってバラバラで、その人の経験則によるという印象である。
スパイスをどのように調合してカレーを香りづけるか、これは多分スパイスカレーの永遠のテーマと言えるだろう。
カレーは香りが命なのだ。