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「あの、正直にお答えすると……」

 ちょっと迷う。貴族の令嬢らしい返答を期待されているならばそれに答えないといけないとも思う。

 でもよく考えたら、ここって、皇太子妃選定の場所だよね。ちょっとばかし貴族の令嬢らしからぬことを言って「変な女だ、顔はマシだが皇太子妃にふさわしくない」とか思われて、宰相閣下の裁量で選から漏れた方が楽になれるんじゃないかな?

 と、思ったので、遠慮せずに正直に言うことにした。

「すごいと思います。同じような見た目になるのに、それほど値段が違うものを用意できるなんて!あの、とすると、もしかしてあのシャンデリアのキラキラ光っているものも、もしかして水晶ではなく、その半値だと言われているベネチュアンのガラスでしょうか?」

 宰相がおどけた様子で顔を覆った。

「ばれてしまいましたか。我が国にはまだ流通していないガラスをよくご存じでしたね?それも値段まで」

 ばれたっていうことは、もしかして言ってはいけなかったってこと?

「水晶の偽物を王城に使うなどと非難されることもありましてね、どう思う?」

 まただ。また意見を求められた。

「偽物じゃなくて、本物のガラスですよね。ガラスを見るのは初めてですが、とてもきれいだと思います」

「ふふふ、水晶の偽物ではなく、本物のガラス……ですか。果たして、お嬢様方の美しさは本物でしょうか。楽しみですねぇ」

 実に楽しそうに話をまとめてハマルク様は部屋を出て行った。それと入れ替わりに、皇太子妃候補の一人が姿を現す。

 順番でいえば、私の次に位の低い、子爵家の……名前は何だったかな……。

 深い紫色のドレスを身にまとった胸の大きな妖艶な美女だ。

 つかつかとテーブルまで歩いて上にのっているクッキーを躊躇なくつまんだ。

「あなたが噂のミリアージュさんね。私はパール・ファエカよ。領地が遠くて、2年に1度くらいしかパーティーに出られないから知らないから初対面になるのかしら?」

「噂ですか?」

「ええそう。周りが聞いてもいないのに教えてくださるのよ。2年前からね。とても美しい娘が社交界デビューした。ファエカとどちらが美しいのか、負けられない、王都へ行くべきだとかなんとか。まったく、どうでもいい話をぺちゃくちゃぺちゃくちゃ」

「どうでもいいんですか?」

 私も誰が一番綺麗かとか本当にどうでもいいとは思うけれど。


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