すがお
みんな必死だったよね?と言いたい。けれど、ぎりぎりとすごい力で腕をつかまれ、振り払って部屋を出ていくことができない。
2名の令嬢が外に出たところで、今度は部屋に化粧を落とすための準備が整えられていく。普段は王妃様の身支度を整えているという後宮侍女たちも入ってきて、今更逃げられないような状態だ。
しかし、いったいなんだって殿下はいきなり素顔が綺麗な子を選ぶとか言い出したのか……。
一応いろいろと配慮されたのか、部屋の中には必要最小限の人間だけが残された。化粧を落とす作業をした侍女がちが退室した後は、8人の令嬢。
護衛と侍女は令嬢の顔を見ないように部屋の後ろに控えている。
いったん退室していた殿下が、再び現れた。
「子猫ちゃんたち、顔を上げてかわいい顔を見せておくれ」
令嬢たちが一斉に顔を上げた。
私も仕方なく顔を上げる。
殿下が驚きの表情を見せた。
驚き、そして、今までとは違う恍惚とした表情。
誰もが、明らかに今までの殿下と様子が違うと気が付いたようだ。
「ごめんね、子猫ちゃんたち……。私は、今、恋に落ちてしまったようだ……」
殿下がふわふわとした足取りで私の目の前に歩いてくる。
これも、作戦?
「なっ、なんで、男爵令嬢ごときが!」
「あんな娘のどこがいいのっ」
と、悔しそうな声が聞こえる。
「私の方が綺麗なのに、どうして……と、言っていいのは私くらいかしら?」
ファエカ様が隣で笑っている。
「まぁ、私の方が綺麗か、彼女の方が綺麗かは意見が分かれるほど微妙かもしれませんが。皆さまと比較するとどうでしょうね?」
ファエカ様の言葉で皆が押し黙った。
「初めから、殿下は綺麗な子が好きだって言っていたのですから、公平な選び方ですわよね。家柄も贈り物の金額も、根回しも全く関係ないんですから」
令嬢たちが立ちあがる。
「早々に皇太子妃が決まってよかったですわ!私に求婚する方に返事を待っていただいてますもの」
「そうですわね。私も、婚約者と婚約解消して参加させられましたが、これで彼と結婚できますわ」
次々と部屋を出ていくご令嬢。わざわざ退室の順番を守り、ファエカ様が最後にウインクを残して部屋を出て行った。
まって、まって、私を置いていかないで。
残ったのは、私と、私の目の前の殿下。
あ、部屋の後方に控えていた侍女や護衛たちもいつの間にか退室して、代わりに近衛兵が入ってきた。
ネウス?
「素顔の……君が好きだよ……」
皇太子殿下が熱いまなざしで私の顔を見る。
「リア……」
え?




