のーみす
「どんな手段とは、何を使っても、誰を利用してもよいということですの?」
殿下がにこやかに笑う。
「もちろんだよ、子猫ちゃん。私を寝室に誘ってもいいよ」
チャラ皇太子の言葉にキャーっと一斉にご令嬢が悲鳴を上げる。
ああ、私は別の悲鳴が上がった。ぎゃーっと。あんなのの婚約者になりたくなぁぁぁぁぁぁいっ!
ファエカ様はなんか顔を引きつらせている。誰が誘うか!とでも言いたげな顔だ。
「では、問題を配るよ」
いつの間にか会場には、机と椅子が10と、殿下用の少し大きめのテーブルが設置されていた。
皆が着席したところで紙とペンとインクが配られる。
「じゃぁ、始めよう」
何を使ってもいいかとファエカ様が聞いてくださったので、遠慮なく使わせてもらおう。
と、スカートの中に隠し持っていた竹算盤を取り出す。持ち運び用の小型サイズだ。
「それは」
瞬時に声が上がる。
殿下が私の取り出した竹算盤を見ていた。
何を使ってもいいと言ったから、ずるいと言われる筋合いはないので、無視して計算を始めるために紙をめくる。
ファエカ様は問題用紙を持ってすぐに立ち上がり、問題を配った官吏の元へと近づいた。
あ!そういうことか!
計算問題があるということは答えもあるということ。答えを持っている人間に交渉するという手がある。
ファエカ様が殿下に誰を利用してのと尋ねたのはそれか。賢い。
と、感心している場合ではない。誰よりも早く計算を終える!
パチパチパチと、猛スピードで竹算盤を走らせる。
ご令嬢たちは問題を協力して説こうとするチームと、殿下が計算をするのを邪魔しようとする……というか、これをいい機会に殿下に体を寄せようとするご令嬢に分かれたようだ。一人で黙々と計算をしているのは私以外は一人だけ。計算になれていないようで、指を使いながら1問目を解いている。
全部で問題は20問。
殿下はご令嬢に邪魔されずに問題を解いているようだけれど……。私が次々に答えを書き込んでいるのをちらちらと見ている。
「終わりましたわ」
すくっと立ち上がり問題用紙を持ち上げる。
「まさか、ありえませんわ。それほど早くとけるはずがありません」
「きっといい加減な数字を書き込んで計算を終えたふりをしただけですわ」
殿下が、立ち上がり私の目の前まで歩いて来た。
手に持っている紙を受け取り、無言で官吏に手渡す。
管理は持っていた紙と私が計算した用紙を何度も見比べ、そして、額に汗を浮かべた。
「すべて、正解です……」
それを聞いてほっと息を吐きだす。焦りすぎて計算ミスしていなくてよかった。




