けいさん
「ええ、もちろん構いませんよ。次回の打ち合わせもしませんと」
次回って……何勝負にするかってこと?
ハマルク宰相がニコニコ嬉しそうだ。
いや、次回はないです。あ、そうだ。次回がないように、計算が得意すぎてかわいげがないと落選させてもらうというのも手かもしれない。
ちょうどいい。今渡しておこう。宰相補佐にしてもらうために役立つかと思って持ってきたのだ。
「成型竹薪の生産に関してレポートにまとめてきましたので、選定会のあとご質問があればその時にでもお答えさせていただきますので」
「おや、これは素晴らしいですな」
ハマルク宰相がパラパラと10枚ほどの髪の束をめくって目を見開いた。
「じっくり読ませていただきましょう。これは誰が?」
誰が?
「私ですわ」
秘密を漏らしてはないかと探りを入れられたのだろうか。とりあえず正直に答えたけれど、宰相が首を傾げた。
「お恥ずかしながら、男爵領は人をたくさんやとい入れるだけの資金がありませんので……」
と、言葉を添えると、やっと私が書いたと信じてくれたようだ。なぜか、宰相の表情が嬉しそうにほころぶ。
お、好感触?これは、あとは算術大会で実力を発揮して。
「子猫ちゃんたち、今日は私とゲームをしないかい?」
全員がそろい、皇太子殿下が入ってくるといつものきらびやかな笑顔で殿下が口を開いた。
「ゲーム?」
ざわざわと令嬢たちがどよめく。
「ほら、これだよ。計算問題。これを、私よりも早く解いた者が勝ちだよ」
おや、殿下よりも早く解いたら勝ち?私たち候補者が競い合うとは違うんですね。
「け、計算?私計算は苦手ですわ……」
「なぜこんなゲームを……」
そうですよね。そりゃ、いきなり計算させられれば驚きますよね。皇太子妃の資質とか関係ないし。
「ふふ、どんな手段を使ってもいいんだよ。私が計算に集中できないように子猫ちゃんたちが構ってくれてもいいんだ。ああ、そうだ。協力し合って解いてもいいよ?とにかく私よりも早く解いた子猫ちゃんの勝ち。買った子猫ちゃんにはご褒美も用意しているよ」
ニコニコと殿下が笑う。
なるほど。
ゲームとして殿下を誘惑してもいいよとルールに付け加えてあるわけか。それで、唐突な計算ゲームを殿下が女性とチャラチャラする時間に仕立て上げたってわけね。
それだけでなく、協力し合うことができるとうことは、令嬢同士の力関係や人間関係も分かっちゃうわけだよね。取り巻きが多い方が有利だとか。派閥まで分かるかも。
……と、まぁ、私には関係ありませんが。実力を見せつけるのみ。
「殿下質問がございますわ」
ファエカ様が手を挙げた。




