りょうり
「ミリアージュ嬢、私の婚約者としてよろしく頼むよ」
そして、手を差し出した殿下の言葉。
理解できないんですけどっ!
こんな時深窓のご令嬢ならば、意識を失って卒倒できるんでしょうね!
ああああ、意識がはっきりしている自分が恨めしい。
私が、皇太子妃ぃ?
ありえない。
ありえなーい!
夢ね。これはきっと。
「殿下、流石に急に決まったと言っても怪しまれるでしょう。あと2~3回は会を続けて競わせましょう。そうですね。ミリアージュ嬢の得意な競技で競わせ、優勝していただくということで」
いや、やだよ。優勝したくないし、選ばれたくないし。
あ、むしろ、私が得意だといっていることで私が負けて、私よりも優秀な人がいればその人に交代できるかもしれないってことですかね?
「何が得意ですか?」
「算術……計算が得意です」
と、素直に学校でも特に成績の良かった科目を上げる。
まぁ、計算の速さは孤児院の子たちには負けるんですけど。
あ、でも、竹算盤を練習して使いこなせるようになったら、同じように計算が早くなるのかしら?ちょっと練習してみようかな?
「ぷっ。はははは、殿下、こりゃ頼もしい。くくくっ」
将軍が笑い出した。なんでよ、もう。
ほかにも何か言っていた気がするけれど、もう、疲れて、耳に入ってこなかった。
選抜会の会場には殿下と二人で戻る。
令嬢たちの目が痛い。
「あら、戻ってきましたわ、どういうことですの?」
「失格だと皆の前で宣言されるのではありませんこと?」
殿下と離れて部屋の隅に歩いていく。
すぐに心配そうな顔をしたファエカ様が近づいて来た。
「大丈夫だった?」
大丈夫じゃないよ。何か大変なことになった……とも言えないので、小さく大丈夫だと頷いて見せる。
「子猫ちゃんたち、ごめんねぇ~。ミリアージュちゃんがあれ以上お肉がおいしく焼けるっていうのを止めたかったから。驚かせちゃったね。だって、お肉は子猫ちゃんたち全員の分はなかっただろう?私だけがおいしいものを皆の前で食べるなんて耐えられなかったからね」
殿下がパチンとウインクを決める。
ああ、上手に言い訳すること。あれは素じゃなくて演技だったなんて。
いや、もしかしてこっちが素で、あっちが演技だったという可能性も……。
「でも、安心して子猫ちゃんたち。代わりに、素晴らしい料理をごちそうするから」
いつの間に手配してあったのだろう。
殿下が右手を上げると、カートに乗せた料理が運ばれてきた。




