まさか!
裏切らないですよ、あ、でも国が滅んで敵国が攻めてきて、領民の命と引き換えというのであれば……あ、やばい、状況次第で、私、簡単に裏切るかも。
「男爵家に十分な益を保証したうえで、男爵家も裏切れない誓約をしていただきましょう」
「あーっと、あの、詳細は、私には、分かりませんので、えーっと、領主である、父と……」
いや、下手に返事をしちゃまずい。時間を稼がないと。
なんなの、誓約って。なんだかんだ、いいように騙されて領地取り上げとかそんなことになってそうで怖い。
「いやぁー、しかし、棚から牡丹餅とはこういうことを言うんだな」
将軍が嬉しそうだ。
牡丹餅って、何?
「そうですね。国内の貴族は微妙な力関係で争いなく上手くいってますから。皇太子妃を輩出した家が力を持ちすぎないようにするためには、どの家からも皇太子妃を出すわけにはいかなかったので……」
宰相がふぅっと息を吐きだした。
いやいや、なんで男爵領の話から皇太子妃の話に?
「もう、茶番は終わりでいいんだろ?女好きを演じて、美人と結婚するなんて馬鹿な王子を演じなくても……。どの勢力からも恨まれることなく、縁談を断り、なおかつ権力とは無縁の妃を選ぶために『顔で選んだ』と言えるように馬鹿を演じるのもつかれたよ」
はい?
演技?
「そうですね。第一に権力争いと関係のない家柄の娘を選ぶこと。第二にできれば浪費家でない娘を選ぶこと。第三に人の上に立つ立場になった時に周りの人間に理不尽を強いないこと。第四に国のことを考えられること……さすがにそんな都合の良い人物が見つかるとは思っていなかったが……」
殿下が私を見た。
「ぷぷぷっ。よかったじゃないですか。ついでに、第五の条件も満たせるといいですね」
第五の条件?
っていうか、それより、なんで3人とも私を見ているの?
っていうか、ちょっと、分からないことばかりなんですけど。
皇太子殿下の「子猫ちゃん」は演技だったっていうこと?
顔で選んだということにしたかったから、この皇太子妃で一番美人を決める皇太子選抜会を始めたってこと?
で、えっと、それから……。
一番分からないのは、ですね。
「ミリアージュ様に、皇太子妃は決定でよろしいですか」
宰相の言葉。
「そりゃ、これ以上にふさわしい人間はいないだろう。妃としてふさわしいだけでなく、軍事的に重要な意味合いを持つ成型竹薪を生産する領地の娘だぞ。男爵家は、王家とのつながりが深くなるからな。いろいろと秘密を隠すにはもってこいってもんだ」
将軍の言葉。




