とうし
ええ?何、それ。
宰相が若いころに手配した絨毯?って、あれ?だいぶお金が節約できた、あの部屋の絨毯のこと?
「限りあるものに不満を漏らさず、工夫をすることで素晴らしいものに作り上げたよね、子猫ちゃん。あのドレス、素敵だったよ」
殿下がキラキラな笑顔で微笑みかける。
ああ?不満を漏らすもなにも、竹色好きだって言った気がするし、工夫したのはサリーの手柄だから!
「殿下へのプレゼントに、国を豊かにするための実用性のあるものを持ってくるとは、まさに見どころがあるとしか言いようがない」
将軍がまだ肉を食べながらうんうんと頷いている。
……プレゼントのことはすっかり忘れていたとは、今更言えないようですが……。しかも、国を豊かにするものじゃなくて、領地を豊かにするものです。領地のことしか考えてません。
「信用に足りるという満場一致でよろしいですか?でしたら、話をしてもいいでしょう」
ハマルク宰相の言葉に、将軍がよし来たと張り切って説明を始めた。
「嬢ちゃん、戦争はいつ起きるか知ってるか?」
え?
「兵を集めやすい収穫が終わった後?」
将軍がふっ笑った。
「ああ、なんだ、このお嬢さん。ずいぶん物知りだな?」
はい?
「ふふ、そうですね。貴族のご令嬢が戦争に関する質問に即座に答えられるというのは珍しいでしょう」
ああ、これまた。女のくせにを出しちゃったかと、下を向く。
「私は気に入りましたよ」
宰相の言葉に驚いて顔を上げる。
気に入った?
「ああ、そうだな。綺麗な顔した女は馬鹿ばかりかと思っていたがどうやらそうでもないらしい」
将軍がずいぶんと棘のある言い方をする。綺麗な顔と脳みそと関係ないじゃない。
「ああ、違うな。着飾ることにしか興味がない女は、だ」
私がムッとした表情をしたからだろうか。すぐに言葉を訂正する。……あれ?悪気はない?
「まぁ、ちょっと話をつづけるぞ。で、戦争は収穫を終わった後に初めて、いつまでかわかるか?」
「えーっと、畑仕事が始まる前……。長引くと言っても、いったん兵を引いてまた秋になったら……いえ、違うわ。ちょっと待って……冬……そう、雪が積もれば兵は動かせないから、冬には戻る?」
正直なところ、ずっと戦争などない平和が続いているので、戦争のことは本で読んだ知識しかない。たしかどこかに「雪だ、これ以上は無理だ。全軍退却」みたいな表現があったような?
将軍がうんと頷く。
「まずまずの回答だな。まぁそうだ。雪が積もれば足を取られる。敵も味方も戦どころじゃないから引くのは当然だと思われるが、雪が積もらなくても冬は無理だ。氷点下に下がる中、軍を進めれば凍死で無駄に命が奪われる」
凍死……。




