ななな
「あ、はい」
売り込み、売り込み。
「つい先日、完成しました新製品です。これから生産体制を整えて、販路を確保しようと思った矢先に、殿下へのプレゼントという機会に誰よりも早くお見せしようと思いつきまs……」
だめだ。嘘は付けない。
だんだんと声が小さくなる。
だって、将軍と宰相となぜか殿下の視線までがすごく鋭く、突き刺さるように私を見てる。
「使えるか?」
殿下の質問に将軍が肉をかみちぎりながら返答する。
「ああ。もちろん。使えるどころじゃねぇな。これが敵国に渡っていたと想像するとぞっとする」
え?どういうこと?使える?
ええ、美味しい料理が作れますよ。
敵国にわたるとぞっとする?敵国でおいしい料理を食べられるようになる、兵の士気が上がる、兵力が付く……?
なわけはありませんよね。
「幸いでした。市場に流れる前に、知ることができて……。それも、皇太子妃候補からもたらされるとは。これこそ僥倖でしょう」
僥倖?宰相が何やらラッキーだみたいなことを言い出してるけれど……。
どちらにしても、将軍にしろ宰相にしろ、黒い竹から作った成型竹薪へは好感触ということよね?
買ってもらえる、売れると思っていいのかな?城の備品?軍の装備?
「細かい話は後ほど詰めるとして」
ハマルク宰相が私を見た。細かい話?商談?ドキドキ。
「成型竹薪の販売を禁止いたします」
「え?」
ど、どういうこと?
「あの、宰相閣下……えっと、どういうこと、でしょうか……?」
麻薬などの人に害を及ぼす品ではない。毒物でもない。それなのに、販売禁止?
「だな。市中に広まって、敵国の手に渡ると厄介だ。いや、どこから情報が洩れるか分からないからすべて国の管理下に置く方が間違いない」
は?
「国の管理下?」
それって、希少な鉱物が取れる鉱山が領内で見つかると鉱山は国所有になるみたいなそんな感じのに似た措置?
「な、なぜでしょうか?」
危険物じゃないし、それほどもうけが莫大に出る物でもないはずだ。
将軍が殿下を見た。
殿下は宰相を見た。
「話しても大丈夫でしょう。ミリアージュ様は私が若いころに手配したペルシーアの絨毯を素晴らしいと言い、ガラスのシャンデリアを宝石の偽物でなはく本物のガラスだと言ったお方です」




