なんで
「……これは、テントの中でも使えることは間違いない」
テント?
まぁそうね。室内で使えるのだからテントの中でも当然使えるよね。
「詳細を知りたいのだが」
将軍が私を見た。
えーっと、軍のテントの中で使いたいっていうこと?
あ、売り込むチャンスだ。
「はい、こちら成型竹薪ですが、通常の薪に比べ同じ時間燃焼させるものよりも重さは約3分の1。形を整えているため、持ち運ぶ時の荷造りもすっきり。少しの火種で燃え始めます。欠点としましてはお湯を沸かすのには時間がかかるということ。肉を焼くことは焚火とさほど変わりません。それから、専用の容器も用意しました。天井からつるして使うこともできます。今はテーブルの上ですが、調理せず暖房用ということでしたら、テーブルの足元に置いていただくと足元からの冷え対策になるかと存じます。そのほか……」
ぺらぺらと話続けること、およそ10分。
「お、焼けたみたいだよ、子猫ちゃん」
にっこり笑って殿下が肉を見た。
侍女がさっと肉を小分けに切り分けさらに盛り付け塩を振る。
毒見役の者が一口肉を食べ、目を見開いてから小さく頷いた。
「いただきまぁす」
殿下がぱくりと肉を口にする。
「これは、すごいね、美味しい。君……ミリアージュちゃんも早く食べてごらんよ」
ミリアージュちゃん……ね。子猫ちゃんよりはましなのだろうか。背中がぞっとする。
「いただきます」
用意されたナイフとフォークを使って上品に肉を口に運ぶ。串にささった肉にかぶりつく方が私にはあっていると自分でも思っているんだけれど。さすがに皇太子殿下の前でそんなことはできるはずもなく。
「あ、美味しい……」
「ねー、美味しいね。これは肉がいいのかな、これで焼いたのがいいのかな」
殿下の言葉に宰相が答える。
「成型竹薪で焼くとおいしくなるとミリアージュ様がおっしゃっていましたから、そのおかげでしょう」
「いえ、あの、ファエカ様が持ってきてくださったお肉がおいしいのもあるかと。領地で成型竹薪で焼いたお肉よりもさらにおいしいです」
ハマルク宰相がふふっと笑った。
「おやおや。そうですか。では、もう、これは特別中の特別の味ということですね」
……おいしい。確かに、美味しいんだけれど。
なんで、宰相と殿下と将軍と一緒に肉を食べているんだろう、私……。
おいしいけど喉を通らないよ。緊張して。
「ところで、ミリアージュ様、この成型竹薪ですが、私も初めて見ましたが、広く知れ渡っている品ではないようですな?」
宰相の言葉に喉を通らない肉を無理やり飲み込む。




