じゅわ
形も大きさもそろえることで燃焼時間が分かりやすくなる。また、火力の調整も容易となった。
中がスカスカの問題も粉にしたものを詰めたことで問題なくなった。その上、形がそろったことで運びやすくもなったし、専用の燃焼用のツボや鍋なども作り出すことができた。
風を送ると、すぐに薪から成型竹薪へと火がうつる。
黒い竹が赤く夕日のように色づく。
ツボの上に網を乗せ、その上にファエカ様の持ってきた肉を置く。
「まだ、煙も出ていないし炎も上がっていない、早いんじゃないのか?」
殿下が首を傾げた。
「大丈夫ですわ。これが、この成型竹薪の特徴ですの。手を近づけてみてください。熱を感じることができるかと思います。燃えているのに、煙も炎も出ません。ですから、このようにかまども暖炉もなくツボや鍋の中で火をおこし料理をしたり暖を取ったりすることが可能で」
質問されたのをいいことに、黒い炭から作った成型竹薪のいいところをアピールする。
周りの人も聞こえてますよね~。いい品ですよ。貴族が使うにふさわしいですよ。
「室内に持ち込地こむこともで……むぐぐぐっ」
突然、殿下の手が伸びて私の口をふさいだ。
「それ以上言うな」
えええ、なんで、なんで、突然口をふさがれちゃったの。
私、不敬な発言とかしてないよね?
「ハマルク、連れてけ、これをもって連れていけ!」
殿下が宰相に声をかけた。宰相は護衛兵たちにさっと命令を出し、私は両脇を護衛兵に固められ、別室へと連行された。
ちょ、なんで、なんで。
「くすくすっ。いい気味」
「部屋で火をたくなんて馬鹿なことをしたからよ。火事になったらどうするつもりかしら」
「ざまぁ見ろね。これであの子は失格ね」
令嬢たちのあざ笑う声が聞こえてくる。
……どうしてこうなった。
別室に連れていかれた私。
不敬なことでも口にしてしまったのかと身構えたものの、連れていかれたのは客間。
親しいものを招いてこじんまりと会食を楽しむような部屋だ。
中央のテーブルの上には、私が持ってきたツボ。網の上ではじゅうじゅうと肉の焼ける音。
下座に腰掛ける私の横には、ハマルク宰相が。
上座には、ランディー殿下が座っている。その隣にはいつ現れたのか将軍の姿が。
「見事に炎は立ち上がりませんね」
将軍が口を開く。
肉から油がしたたって、じゅわーっと音をたて、煙を上げた。




