はこ
ああ、こんな時に高位貴族とのつながりがあれば貴族の間に口コミで広がるんだけれどな。
親しくしている貴族なんていな……ん?
高位貴族ではないけれど、ファエカさんにプレゼントしようかな。確か、ファエカさんは遠方の……冬が厳しい土地が領地じゃなかったかしら?
実際に冬場に使ってみて感想をもらえるかもしれない。皇太子妃選びが終わった後も手紙などでやり取りできないかしら?お友達というほどまだ親しくはないけれど……仲良くできるといいな。
って、待って。遠方の領地へ送るとなると……輸送のことも考えないと駄目よね。サイズが小さくて軽いといい。
軽さに関しては、竹に比べて半分以下どころか4分の1以下と軽い。サイズは空洞が多くてかさばる……だめねぇ。遠方へ輸送して使うには向かないか。
「ミリアージュ様、今日もお綺麗ですわ」
黒い竹の研究に明け暮れ、あっという間に次の皇太子妃選定会の日がやってきた。
「んー、なんか忘れてるような気がするんだけれど……」
何か大切なことを忘れてる気がする。
なんだったかなぁ?
「忘れ物はありませんよ、しっかり準備させていただきました。ファエカ様も喜んでいただけるといいですね」
と、マールが自信満々に、竹かごに入ったファルカ様への手土産を持ち上げて見せた。
竹かごには白いレースを施した布を敷いて黒い……あ、思い出した!
大切なこと、思い出した!
布、布よ。
ディラのハンカチ!
あれからも探してみたけど見つからなかった。
お城に、汚れたドレスを洗濯してもらったときに一緒に洗濯室とかで行方不明になったことは間違いない。
取っていてくれているかな。
ハンカチには刺繍もしてある。Rの文字……。Rの文字を手掛かりに持ち主を探したかもしれない。
……というか、私の着ていたドレスから出てきたと誰かが気が付いて、今日渡してもらえないかなぁ……。
とりあえず聞いてみないと。
うん、思い出せてよかった。思い出せて。
……ん?
なんだろう。思い出したというのに、このすっきりしない感じは。
2時間前に入城。今日は、嫌がらせ令嬢たちの姿はない。ほっと息を吐きだし、壁際に並んだ椅子の一つに竹かごを持って向かう。
ファエカ様への土産はどこかで預かってもらおうかと思ったのに、なぜか「そのままお持ちください」と案内係に言われて持ってきたけれど……。
……うーん、せっかく皆が来る前に洗濯部屋に行って、ハンカチのことを聞こうかなと思ったのに……。これ持ったままじゃさすがにねぇ。
帰りでいいかと、あきらめて椅子に座ろうとしたところで、ファエカ様が両手で箱を抱えて入ってきた。




