表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化】貧乏男爵令嬢の領地改革~皇太子妃争いはごめんこうむります~【WEB版】  作者: 有(富士とまと)


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

59/84

竹色

 そんな大切なドレスを私が先に着てしまったなんてばれたら、またいろいろ言われる。それに、汚すわけにはいかない。誰かにまたうっかり飲み物をこぼされても困るから。部屋に戻って乾いた喉はそのままに、じっとドレスが戻ってくるのを待った。

 まだ少し湿ってはいるものの、しっかりシミはきれいになったドレスに着替えて、会場に戻る。

 すでに皇太子妃候補10名はそろって、時間になるのを待つばかりとなっていた。

「わー、子猫ちゃんたち、なんて綺麗なんだ」

 会場に入るなりチャラ皇太子は両手を広げてチャラいことを言い始めた。

「黄色い花が咲いたようだよ。君から香る花の香りに包まれたいよ」

「赤い情熱的な色、私にその情熱をささげてくれるかい」

「闇に光る月の女神のようだね、美しさがひと際輝いて見えるよ」

 と、一人ずつを褒めたたえ始めた。

 チャラさもあそこまで極めれば立派だわ。と、何か遠い目になる。

「おや?素敵なドレスだけれど、こんなドレスはあったかな?」

 殿下が、私の前で固まる。

「申し訳ございません殿下。私により似合うようにと、サイズ直しをしてくださったお針子たちが刺繍を提案してくださり、私が、許可をいたしました」

 まさか、ドレスのデザインを覚えているとは思わず慌てて頭を下げる。

「そう、自分に似合うように工夫したんだね。ずっと素敵になったよ。というか、ごめんねぇ。もう少し明るい色がよかったよねぇ?」

 げげっ。皇太子に謝らせちゃったよ。

 っていうか、他の令嬢の目が怖い。怖いって。

 まるで、男爵令嬢にハズレが回ったみたいな感じに殿下も思ったみたいなこと言わないでよっ。くっ。気が回らないアレだよ。

「いいえ、私、このドレスはとても気に入っております」

 嘘つけみたいな目でみんな見てる。殿下の目も不審げだ。

「私の住む領地には竹林がございます。我が領の財産でもある竹の、すくすくと成長した色のドレスはとても誇らしいです」

「竹が財産?」

 皇太子殿下が首を傾げた。

 うわ。キラキラが零れ落ちるくらいキラキラだ。どんな表情を見せてもイケメンっぷりは変わらないんだね。って、違う、そうでなく。

「ヒューレド男爵領地は、耕作地の少ない小さな領地です。畑は少ない分、竹から作る竹製品が大切な領の収益源となっておりますそれで」

 ふぅーんと、興味なさそうに殿下が声を上げる。

「ずいぶん領地に詳しいんだね?」

 殿下の言葉に息をのむ。

 どういう意味?

 殿下は知らないでしょうから教えて差し上げますわと、馬鹿にしたと受け取られた?

 ……ああ、それとも女のくせに領地のことをあれこれ言うなんて生意気だと思われた?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ