ドレス
いや、男爵家なんで、立場は弱いですよ?
「この間も、ずいぶん目立っていらっしゃいましたわよね?」
「そうよ。ドレスはいらないなどと、殿下の気を引くような発言をして」
ああ。あれ。確かに目立ってしまった。
「それに、これは何?こんなドレスはなかったと思いますわ」
「あら、本当ね。こんなに素敵なドレスは記憶にありませんわ」
二人が私のドレスに視線を落とす。
「あの、これは……刺繍を入れていただいただけで、あの時のドレスで」
パシンッと、頬が鳴った。
黄色いドレスのご令嬢の持っていた扇で、ほほをたたかれた。
「また、一人で目立とうというの?」
「い、いえ、そんなつもりは……」
この刺繍はサリーが一生懸命私の……いえ、リアの知り合いだというミリアージュのために……。
「何がそんなつもりはないよ!どうせ、男爵家に残されたドレスがみすぼらしかったから刺繍をしたとかなんとかいうつもりでしょう!」
「いえ、そのようなことは……。みすぼらしいと思っては……」
「嘘おっしゃい!その腐ったような汚い緑のドレスよ?」
……腐ったような緑って……。
よく成長した竹のような色で、渋くて綺麗なのに。
「そうよ!そんな地味なドレスを気に入るような人はいるはずがありませんわ!」
いえ。私は好きだし。派手なドレスはむしろ苦手というか、目立ってもろくなことがないって知ってるから嫌いなんだけれど。
「こんなドレスしか残されなかったと同情を買いつつ、それを刺繍で素敵にアレンジしたと才覚を見せつけるつもりね」
だから、そんなつもりはないんだけれど。
「はっ。生意気なのよ!男爵家の娘が本気で皇太子妃の座を狙っているの?」
狙ってません。
「さっさと辞退しなさいよ。目ざわりなのよ!」
辞退できるならしてるって。何を言っているの?
まるで私が好んでこの場にいるようなことをなぜいうのか。
ため息しか出ない。
「馬鹿にしているの?ちょっと綺麗だからって!」
「そうよ、生意気なのよ!」
カッとなったうす紫色のドレスのご令嬢が、テーブルの上に載っていた飲み物をひっつかんで私のドレスにぶちまけた。
「あっ」
さすがに声が出た。
黙っていられない。
「サリーが……今日のために……何日か徹夜したと……必死に……私のために……」
「何をぶつぶつ言っているの、気持ちが悪い!」
「そうよ、ちょっと手が滑っただけ、そうでしょう?よくあることよ」
ああ、思い出した。
薄紫色のドレスの女性は伯爵家のご令嬢だ。黄色いドレスの女性も確か伯爵家だ。
そして……。




