たちば
3の鐘が鳴る。そろそろ帰る時間だ。
孤児院に顔を出すと、まだ熱心に竹算盤で計算をして遊んでいた。
使い心地を聞いたところ、5本だけじゃ物足りないのと、一番外側が扱いにくいということだった。ということはもっと本数を増やすことと、一番外側は枠と少し話した方がいいのかな。
カイは実用性を考えると10のものは置く場所が多く必要になるため書類などの計算をするときには紙が隠れてしまうのではないかと。
なるほど。ということは、10のものはもう少し1つずつ小さくした方がいいのかな?
「しばらく、来られないかもしれないけれど、私のえーっと友達が代わりに来るから、いろいろ教えてね。改良したのも持ってくるよ」
マールに行ってもらおうか。竹製品の取引のためにマールが王都に足を運ぶこともあると思うし。
……。そう、世の中にはどうにもならないことがある。
「まぁ、ミリアージュ様とても素敵です!」
サリーが頑張ってくれたドレスが届けられたのは1日前。
今日は、2回目となる皇太子妃選抜会だ。
あー、やだやだ。早く失格になりたい。あと何回あるの?今のペースなら1か月に1度。1年ってことは、今日も含めてあと11回かな?
はぁー。気が重い。
でも……。
でも……。
「本当に、素敵よね」
サリーが一生懸命刺繍してくれた胸元の白い花たちが、私を励ましてくれる。
招集時間の2時間前に王城に到着。
身分の低い者から先に入らなければならないという暗黙の了解何とかならないかしらねぇ。
2時間もぼんやり部屋で待つの退屈なんだけれど。せめて、本でも読んで時間を潰せればいいんだけれど。あいにくと、貧乏男爵には本を買うような余分なお金はないのよね。図書館の本は持ち出し禁止だし。
部屋のドアを開けてもらい中に入るとすぐに硬直した。
え?
なんで?
部屋には、うす紫色のドレスと、黄色いドレスを着たご令嬢がいた。
「あら、男爵家が、生意気にも私たちよりも遅くいらっしゃるとはどういうことかしらね?」
うす紫のご令嬢が私をにらんだ。
「本当に、何様のつもりかしら」
黄色のドレスのご令嬢が私の目の前にと歩み寄る。
何で?えーっと、ちゃんと2時間前に到着したよね?
それよりも前に来ていたということ?
えっと、彼女たちの家の爵位はなんだっけ。
「も、申し訳ありません、まさか、こんなにも早くいらっしゃるとは……」
とりあえず頭を下げる。
「はっ、しらじらしいわね!」
「そうして、いかにも立場が弱いように見せているだけでしょう?」
え?




