表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化】貧乏男爵令嬢の領地改革~皇太子妃争いはごめんこうむります~【WEB版】  作者: 有(富士とまと)


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

54/84

10

「リア……」

 頭上から降ってくるディラの声に戸惑いがある。

「お別れ……ね」

 ディラの手が、私の背に回った。

「ああ……」

 小さく聞こえるディラの声。

「ごめん……」

 何を謝っているのか分からない……。

「今から言うことは……聞かなかったことにして……それから忘れて……」

 え?

「ごめんね……でも、言わせて」

 ディラの腕に力が入る。

「……好きだよ、リア」

 少し擦れた小さな声が耳元でささやかれる。

 馬鹿。

 馬鹿。

 聞かなかったことにしてとか、忘れてとか……。

 できるわけない。そんなこと……。

「ディラ……忘れないで……」

 だから、今度は私の番だ。

「私も、ディラが好き」

 私たちはここでお別れだけれど。

 何か辛いことがあった時に……。自分が好きになった人に確かに愛されていたんだと、思い出して。

 あなたは私が好きになった素敵な人なんだから。大丈夫だと……。

 きっと、子供のころの思い出として、今の気持ちなんて忘れちゃうでしょう。忘れてもいい。

「ごめん」

 ディラが再び謝った。

「うん」

「ごめん」

「うん」

 分かってる。

 分かってる。

 2の鐘の音が聞こえ始めた。

「ああ、時間だ……リア……」

 ディラが何かを言おうと言葉を探している。

「本、ありがとう」

 何事もなかったかのように、笑って手を振った。

「うん……」

 ディラは言葉を飲み込んで、軽く手をあげて部屋を出ていく。

 まるで、お互いにまたねと言って軽く別れるように。

 部屋に残されたのは、ディラが置いていった本3冊と私と……。

 私の手の中に、返しそびれたハンカチ。

 後を追って返そうと思えなくて。

「もらってしまってもいいかな……」

 ハンカチにはDではなくRのイニシャルが入っていた。

「だよ……ね……」

 ディラは偽名かなと思ったけれど。

 私には、彼は一生ディラだ。彼にとって私がミリアージュではなく、リアであるように。

 ふぅ。

 小さく息を吐きだし、ハンカチを折りたたんでポケットに入れる。

 世の中には、どうにもならないことがある。

 だけれど。

 どうにかしようと思えばどうにかできることだってある。

 ディラが持ってきてくれた本。しばらく図書館には来られないから、読めるだけ読もう。

 技能。技術の本。男爵領の未来のために。

 チャラ皇太子が王位継承するまで推定10年。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ