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【書籍化】貧乏男爵令嬢の領地改革~皇太子妃争いはごめんこうむります~【WEB版】  作者: 有(富士とまと)


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53/84

そう

 男爵家の娘が間違っても縁が結べるような家の人間じゃない……。

 ふ、ふふ……。分かってたけれど、もしかしたら、違うかも。そうじゃないかも。ちょっとは可能性あるかもなんて……。

 なんて、往生際が悪い私……。

 だって、好きなんだもん。

 だって、だって、好きになっちゃったんだもん。

 好きでいることくらい……許されるかもなんて、かもなんて……。

 ダメだよ。

 駄目だよ。

 だめだよ。

 触れてほしい、触れたい。好きになってもらいたい。好き。ディラに気が付いてほしい。ディラに気が付かれてはいけない。

 ディラがそんな人じゃないってわかってるのに、ねぇ、ミリアージュの綺麗な私を見せたら好きになってくれる?なんてことまで考えた。

 やだ。

 心が壊れそうだ。好きでいることくらいって、駄目だ。きっと。

 いつか、根も葉もないうわさをされた……男を誘惑してとか色目を使ってとか……それを、してしまいそうだ。

 怖い。自分がいや。辛い。好きでいちゃだめなんだ。いい人だから……ディラを困らせちゃだめ。嫌われたくない。ああ、違う、違う。

「ど、どうしたの?あ、あの、僕、何か悪いこと、した?」

 ディラが慌ててポケットからハンカチを取り出して、私の頬に手を伸ばす。

 ああ、泣いてるのか、私。

 ……ディラは……涙をぬぐうためすら……ハンカチを持った手を止めて、私に触れない。

 ディラだってわかっているんだ。

 自分は貴族で、女の子に気のあるそぶりを見せてはいけないと。身分が違う女性から言い寄られても困るって。

 ディラが腕を下ろして私にハンカチを差し出した。

 ハンカチを受け取ると、頬をぬぐう。

「ありがとう、ディラ……ごめんなさい。私、しばらく事情があってここに来られないの……あ、だから、その、せっかく持ってきてくれた本が読めないと、思ったら……」

「そうなんだ……大丈夫、本は、逃げない……えっと、しばらくってどれくらい?僕は……逆にしばらくしたら、来られなくなる……」

 びくっ。

 来られなくなる?

「い、1年くらい……」

 小さな声で答えると、ディラが寂しそうな声を出した。

「そう……か。じゃぁ、もう会えないかもしれないね……」

 もう、会えない?

 ドキリとして顔を上げれば、ディラが私をまっすぐな見下ろしていた。

 もう、会えない……。

 どうしよう、どうしよう、どうしよう。

 止まらない、止められない……。

 思わず、ディラに抱き着いて泣いてしまった。

 ハグして別れを惜しむ人たちがいる。だから、だから……。

 そう、それだけだから。ね。

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