ぼたん
それからボタンを糸からはずして竹串に通す。うん、穴の大きさは大丈夫のようだ。キリで開けているのだろうか。そろっている。竹串の太さをあとは合わせればいいんだ。
竹串に、5つのボタンを通したものを4本用意する。
「ああ、そうして何個かずつに分けて数えやすくして売るつもりですか?多少見栄えはよくなると思いますが、手間に見合うだけの……」
と、マールが何やら言っている言葉を無視し作業を続ける。
竹串が渡る大きさの小物入れ編んだ竹の隙間に竹串の先を指し、ボタンを通して向かい側に渡す。そうすることで、竹串は宙に浮いてボタンも浮き上がる。
竹串に通したボタンはバラバラにはならずに。
上に下にと移動させることができた。
「何をしているんですか?ミリアージュ様?」
さすがに数を数えやすく竹串にさしたわけじゃないとマールも気が付いたようだ。
「おや、子供が喜びそうですねぇ。振るとカチャカチャ音が鳴るおもちゃですか?」
領民も興味深く私の手元を見ていた。
確かに、振れば小気味よい音が鳴る。そういうおもちゃも作って売るといいかもしれない。
だけれど、これはおもちゃではない。
「マール、孤児院の子たちが計算に使っていた竹串……の代わり。こういう感じの物にしたらどうかしら?、13足す22とかボタンを動かして竹串を移動させる代わりにするの」
マールがやっと私の意図に気が付いたようだ。
「なるほど!これならばばらばらになりませんし、桁が混ざって分かりにくくなることもありませんね。ああ、でも長い竹串分がありませんね……そうだ、こうしてはどうですか?」
マールが竹串を1本、縦に並べたものとちょうど直角に交わるように横に1本通した。
「こうすれば、この串が邪魔になってこれ以上上に移動できないので、この上に一つ長い竹串の代わりのボタンを通して」
「なるほど!上側と下側に分けるのね!」
領民が首をかしげる。
「なんですか、これ?」
「計算するための道具を作っているの!」
目を輝かせて領民に教える。
だけれど、領民はすごいという顔は見せない。
「ねーねー、あたしにも計算できるようになるの?」
「これ作ったら計算できる?」
子供たちだけが目をキラキラと輝かせている。
ああ、そうか。そうだ。
私は孤児院の子供たちは親の仕事を継ぐこともできない、孤児院を出てからも仕事が見つかるようにと……いろいろ教えていた。
領民たちは、親が、村の人たちが子供たちを育ててくれているからと、何も教えるようなことはしなかった。
……100人程度しかいない領民……だからこそ、全員が計算できるようにもできたんじゃないだろうか。
全員が文字をかけるようにできたんじゃないだろうか。大人たちは仕事をする必要があるから学ぶ時間がないとしても、子供たちは?
「ミリアージュ様、むしろこうしたらどうでしょうか?」
マールが考え込んでしまった私の横で、ボタンと竹串で別の計算道具を作り上げていた。
1本の竹串には10のボタンが通してある。




