まぶし
ディラが私に会いに孤児院に来てくれた。
そう聞いただけでこんなにうれしいって思う自分がいる。
だから、悲しい。いつの間に、私、こんなにディラのこと好きになってたんだろう。
好きになったって……。
その先の未来に希望なんてないのに。
立派な護衛のいる貴族の息子と……。木こりを護衛にするしかない男爵令嬢の娘なんて……。
身分違いも甚だしい。
……身分違いと言えば……。
チャラ王子。一国の王子と男爵令嬢っていうのも甚だどころか、ありえないって気が付いてもらえないかな。
王子ともなれば反対を押し切ってわがままを通せるとでも?
……でも、後ろ盾のない男爵令嬢なんてたとえ王子のわがままが通って妃になったとしても、苦労しかないと思うんだよね。
「僕の子猫ちゃんたち~」っていう王子の顔を思い浮かべる。やたらとキラキラきらめいて、優しそうに微笑むイケメン。
……苦労って言葉が抜けてそうな顔だ。
うー。ダメだ。
悲しんでいる場合じゃない。あと10年ほどでなんとか男爵領がつぶれずに済むつぶされずに済む、他国に侵略されても男爵領は……領として残らなくても構わないけれど、領民たちが犠牲になるようなことがないようにしないと。
マールが部屋に戻ってきた。
「マール、行くわよ!」
「え?どこにですか?ちょっと休憩させてください。今、兄さんの所に行って戻ってきたばかりなんですよ。っていうかミリアージュ様もその恰好のまま行けないでしょう?」
ん?
あ、社交界用メイク落としてないっ。
着替えてメイクを落としてマールと屋敷を出る。
「それで、ミリアージュ様、どこへ行くんですか?」
マールの質問に、足を止める。
「あー、そうだ。どこ行けばいいんだろう?」
「はぁ~?」
マールが恨めしそうな顔で私を見た。
「……ごめん。マール。気ばかりが焦って。……ほら、領地の新しい売りを探すというか……」
嘘だ。
気が焦っているのもそうだけれど……。本当は、立ち止まると泣いてしまいそうだから。
何かしていたいだけ。
失恋っていうんだろうか、こういうのも。
「わかりました。ではゆっくり回りましょう」
マールは何も知らないはずなのに、ふっと小さく息を吐くと笑った。
「孤児院の子たちに会えなくて寂しくたって、皆がいますよ」
マールの言葉が終わらないうちに、子供たちがかけてきた。
「あ、ミリアージュ様だ!」
「みりーずちゃま」
ニコニコと笑顔がまぶしい。




