第4話
「今日はこのご本を読みますよ~。集まってくださ~い」
「はぁーい」
声をかけると元気に返事をして子供たちが集まってきた。少し年かさの子は、建物の中にいる子たちを呼びにいってくれている。いつもの光景だ。
10名ほどの子が集まったところで、絵本を開いて、子供たちに開いたページを見せる。
「むかし、むかし、あるところに……」
指で文字を指し示しながらゆっくりと絵本を読み進めていく。
いつの間にか、青年が私の後ろから子供たちの後ろに移動していた。
「そこで犬のコロが鳴きました」
時々言葉を止めて、次の文字を指さす。
「「「わんわんっ」」」
すると子供たちが声を合わせて読む。読むというよりも何度も読んでいる話なので覚えているだけなのだけれど。
青年が後ろで驚いた顔をしている。
「あわてて、泥棒が、逃げていきました」
次の文字を指さす。
「ひゃー、たすけて」
私が読む前に、後ろにいた青年が声を上げる。
子供たちが一斉に振り返った。
「にげていく泥棒のうしろで、コロがもう一度鳴きました」
「「「わんわんわんっ」」」」
子供たちの声に、青年が泥棒のセリフを口にする。
「もうしません、ごめんなさい」
ふ、ふふ。
「こうして、村は平和になりました。おしまい」
わーっと、子供たちは大興奮。
「もういっかい、もういっかい!」
小さくジャンプしながら小さな子供たちが声を上げる。
「じゃぁ、もういっかいね。――むかし、むかし……」
2回目は、泥棒のセリフを全部青年が読んでくれた。2回目が終わるころには帰る時間が迫っていた。
「じゃぁ、またね!」
立ち上がって子供たちに挨拶すると、青年も立ち上がって私の横に並んだ。
「おにーちゃんもまた来る?」
子供の一人が青年に尋ねた。
青年は少し考えてから
「来られるなら、来る、来たい。来られないときはごめん」
また来るよなんて、来られるかどうか分からないのに適当に返事をしなくてよかった。来ると言っていたのに来ないと、裏切られた気持ちになるのは子供たちだ。
孤児院の中庭の扉から礼拝堂へと戻る。青年と並んで歩きながら、図書館への扉へ向かう。
「あの……」
ぺこりと頭を下げる。
「ありがとう」
「ごめん」
ほぼ同時に青年も頭を下げた。
ゴチン。
「いてっ」
「いたっ」
はい。まさかの、同時に頭を下げたことで、私の頭の上に、青年の額がぶつかりました。
「ぷっふふふ、ふふ。あの、ありがとう。子供たちも楽しそうでした」
「あ、いや、ごめん……その」
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