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「お支度をしないとっ」
支度?
「サイズ直しに不具合がないか、お針子さんが来ています」
って、ああ!
鏡に映る姿を見て再びハッと口を押える。
化粧してないと、お城に出入りしているミリアージュに見えない。いや、見えないこともないけれど、孤児院に出入りしているリアを知っているサリーが来るのであれば、ノーメイクは危険だ。
「マール、待ってもらって。急いで準備を……」
バタバタと着替えて化粧して髪の毛を整えて。
「お待たせして申し訳なかったわね」
部屋に、サリーたちを通した。
2人の採寸の時にいたお針子さんとお針子見習いのサリーの3人がいろいろな荷物を手に部屋に入ってきた。
「事前の連絡もせずにこちらこそ申し訳ございませんでした。お嬢様がお帰りになるまで何時間でもお待ちするつもりでした」
そういえばそうだ。普通は手紙なり人づてなりで、いついつにお邪魔してもいいかと尋ねてからくるものだよね。
それがないから大慌てで準備する羽目になったんだ。
「なぜ、そんなに慌てる必要が?何かトラブルでも?」
試着して、問題ないか確認しながら会話を進める。
「いいえ。逆です。サリーが頑張ってくれて、あっという間にサイズ直しが終わりました」
女性の言葉に嬉しくなってサリーを見る。
頑張ってくれたんだ。ありがとう。
「それで、他の候補者に負けないドレスに仕上げたいと……サリーが」
と、言って、女性が1枚の紙を取り出した。
「胸元へ刺繍を施したいと申しまして」
そこにはドレスの絵が描かれている。私が身に着けている草色のシンプルなデザインのドレスとは違い、胸元に白く美しい花の絵が施されている。
ほかのドレスは、華やかなピンクや黄色、または肌を美しくより白く見せる濃紺や、鮮やかな赤といった若い女性が好みそうなものが多かった。草色は、少しぼやけたくすんだ緑だ。あまり人気のないこの色のドレスが残っていた。正直ドレスなんてどれだっていいし、そもそもいらないと思っていたけれど。立派に成長した竹の色みたいで、気に入っている。普段来ている地味な灰色の服とそう遠くないのも落ち着く理由かもしれない。
まぁ、本当に地味と言えば地味だけれど。
デザイン画はずいぶんと印象が違う。地味に見えた草色も、白い花を引き立てるにはとても素晴らしい色に感じる。
「許可をいただければすぐにとりかかりたいと……」
なるほど。これだけの刺繍を施すには時間が必要だものね。次の登城まで3週間しかない。




