まは
「しばらく、必要以上に王都には出かけない方がよさそうね」
護衛を連れてまで王都に足を運ぶつもりはない。そもそも男爵家には護衛らしい護衛はいない。屋敷には何人か警備兵はいるけれど。
吹けば飛ぶような男爵家の人間をわざわざ襲うメリットなどないのだから。……王都の学校に通うのも買い物に行くのも孤児院へ顔を出すのも護衛なんて必要なかった。
「また来るよ、またね、リア」
と、笑って手を振っていたディアの姿が思い浮かぶ。
ああ、私も。またねと、そう答えた。
会いたい。
けれど、これでよかったのかもしれない……。
これ以上好きになっても……彼とは身分が違ってどうにもならないのなら、もう、会えわない方がよかったのかも。
「そうですね。学校もしばらく休みですし。何か必要があれば私がお使いしますから」
「ありがとう……マール……」
誰かを好きになても、好きな人と幸せになれるわけじゃない。どうせ、好きな人と結ばれないなら……。
誰でも同じ。皇太子の婚約者になっても……。
「かわいい子猫ちゃんたち」
突然チャラ王子の顔が浮かんだ。うううーっ。背筋がぞっとする。
ダメだ。あれはダメなやつだ。
そして、国が沈む滅びる。亡国の后など、待遇は決まってる。一緒に破滅だ。もしくは、まだ私が若いときに隣国に攻め込まれたら、死刑は免れるかもしれないが誰かの慰めものコースしかないと思う。
そんな末路しかない皇太子妃なんて絶対避けないと。
でもって、男爵領は助かる道を考えないといけなかったんだ。
計算する道具は結局広まるまでは一時的に売り上げが上がって領の収入になるかもしれない。けれど、いったん需要が落ち着けばそれほど継続的に売れ続ける品ではないと分かった。
まぁ、一時的にでも収入が増えればそれを元手でいろいろなことができるのでやってみる価値はありそうだけれど。
「た、た、たいへんです、ミリアージュ様、ドレスが届けられます」
3日後。竹の棒をこうでもないああでもないと机の上でいじくっているとマールが慌てて部屋に飛び込んできた。
「ドレス?」
注文した覚えなんてないけれど。
首をかしげて、ハッと口を押える。
「まさか、もう?皇太子殿下からのプレゼントのドレス?あれから4日しか立っていないけれど直しが終わったっていうの?」
サリーたち頑張ってくれたんだ。うんうん。と、感動する傍ら、マールが大慌てで部屋の中をあっちこっち動き回っている。




