しょうたい
「それに……あの子たちはどうするんですか」
「あの子たち?」
「孤児院の子供に計算を教えているのは、計算ができれば仕事を得ることができるようになると思っているんですよね?計算が簡単にできるようになってしまったら、計算ができることが有利に働かなくなるのではないですか?」
マールが心配そうな顔をする。
そうか。マールも……あの子たちのこと考えてくれているんだ。
「大丈夫よ。あの子たちの武器は計算だけじゃないのよ。文字もかけるし、裁縫もできる。ふふふ」
指を3本立てて見せる。計算、文字、裁縫。
そういえば何かの本で、1つでは弱いけれど3つ集まれば強くなるみたいな話を読んだことがあった。
「まぁ、確かにそれでサリーちゃんなんかは就職決まったんですよね。……でも、男の子が裁縫の腕を磨いても……」
「あ、それなのよ!それ!」
突然大声を上げたマールが何ですかとびっくり顔をしている。
「なんと、計算ができて読み書きもできて、さらに裁縫ができる男の子を求めている職場っていうのが、世の中にはあってね!」
「え?そうなんですか?」
「そう!それも国に使える兵よ!兵!前線に出る兵じゃなくて、雑用係の兵が必要なんですって!兵たちの持ち物に名前を刺繍したりできるとありがたいって。文字と裁縫できる男の子は素晴らしいって、ディラが教えてくれたの。それで、兵になる試験をぜひ受けたらどうかって。護衛のネウスに剣の基本とマナーを教えてあげるように頼んでくれたのよ!」
マールが首をかしげる。
「ディラ?護衛のネウス?……誰、ですか?」
あ。
「えーっと、ディラはディラよ……」
「護衛をわざわざつけて孤児院に表れる……もしかして……」
もしかして?
「皇太子妃候補となったミリアージュ様の素行調査?」
へ?
「ま、まさか……。リアの正体がミリアージュだって、ばれてる?あ、でも……皇太子妃候補ともなれば、王家の影と呼ばれる人たちが……もしかして、ディラとネウスは影?」
影ならば、貴族ではない。
家名を名乗らなかったのではなく、家名たなかったというだけで……。
あ、でも、わざわざ護衛役と二人で行動する必要はないわよね?
「違うと思うわ。影と呼ばれる人なんだもの。影から調査できるはずだし。私に接触する必要もないんじゃないかしら?」
皇太子妃として調査されることは構わない。だけれど……。




