茸ではなく
……待てよ?この、竹串計算方法が広まったら、竹串が売れるようになるんじゃない?竹産業が盛んな男爵領としてはありがたい話……ではないよねぇ。竹串なんて、計算用としてでなく普通に入手できる。……ってことは、計算用竹串を発展させた、何かこう、計算に便利な道具を作ることができたら……。んー。
子供たちの手元を見る。
竹串は時折ころりと転がり位置を変える。これが、移動させた場所で固定されるようになれば便利じゃないだろうか。風に吹かれても机の上でなくても使えるような形……。
加工には多少技術が必要な品にした方がいいわよね。産業にするなら……技能のあるものでなければ作れない方がいい。
計算が早く正確にできるようになるという品ができれば……。そして、それを使って計算することが当たり前になれば、なくなれば困る。
手に入らなくなれば困る。作れる人間は大切にされる……。
おお!技能を身につけた領民は救われる作戦に、いいんじゃない?
「はい、計算終わった!」
「おいらも!」
と、考え始めている間に、子供たちが計算を終え手を挙げた。
「早いな……ネウスはまだ途中か、答えは?」
ディラの言葉に、二人が同じ数字を口にする。答えのページを確認すれば見事正解。
「次は、問題を書き写したもので勝負を……!」
子供に負けたのが悔しかったのか、ネウスさんが再戦を申し出た。
「そうだな、書き写した問題を、用意しよう」
と、ディラが問題を書き写して3人に手渡した。
今度は3桁4桁5桁の数字が20ほど並んだ難問だ。
「では、スタート」
「はい!おいら終わった!」
「くそ、今度は少し遅かったか、終わった!」
「ああ、また負けた。だが、本の少しの差でした。次は負けません」
子供2人とネウスさんは、ディラに言われるでもなく、問題を書き写して何度か勝負を繰り返していた。答えは誰も正解。
「すごい計算能力ですね、ネウスさん」
「いや、すごいのは、子供たちだろう……」
問題集の難問がなくなったところで勝負は終わり。
ガンガンスピードを上げていく計算勝負に、手に汗を握りながら私もディラも誰が勝利するか見守っていた。結果は最後までいい勝負。
「すごいね、君たち」
ネウスさんが初めに私に見せていた仏頂面とは全く違う笑顔で、子供たちに話しかけた。うわ、イケメン。
笑うとより素敵に見える。けれど、どうにもチャラ男を思い出していい気はしない。そこで、ディラの顔を見る。




