行き
「さすがお嬢様。このまま火をつけるんじゃ、火が消えるまでに大風でも吹いたら山に燃え広がる危険がありますわな。少しずつしか燃やせなくてもめんどくさがっちゃいかんです。森から距離を取って、あのあたりに穴ほって少しずつ燃やします」
あ、いや燃やさずに済む方法を考えてたんだけれど……。
一度に燃やさないで、少しずつ燃やすのか……。
逆に、燃やすこと前提で何かに役に立てることはできないのかな?
燃やすと煮炊きができる。暖を取ることができる。大鍋料理でもする?いや、誰が食べるのって話。
……ここで食べる物じゃなくて、王都に持って行って売れる物を焼く?……そもそも農地が少なくて加工するだけの食料もないから無理か。
いくら薪の分節約できる食べ物でも、材料をいったん王都から運んだら輸送費が……。んー。
あとは、暖か。冬に燃やせば、畑仕事の合間に体を温められる……けれど、そもそも冬の畑仕事なんてない……。
「あー、マール、ちょっと図書館に行ってくるわ!なんだか頭がぐるぐるしてきた!」
そもそも、私、領地を回っていたのって、何か領民たちに何があっても大丈夫な技能がないかと思って探しに行ったはずだ。
竹を燃やして処分するのがもったいない問題にすり替わっちゃってる。
屋敷に戻ってマールに告げる。
「何かヒントになる本がないか探してみる」
私の頭で思いつくようなことなどたかが知れてる。こんな時に必要なのは情報だ。知識だ。
そう、本よ!
「じゃぁ、お嬢様、またあっちの変装ですね」
変装?
「ああ、学校はないけれど、いつも学校帰りに寄っていたから、そうね。突然いつもと違う顔をしていくわけにもいかないわね……ふふ」
「なんですか、突然笑い出して」
「サリーと昨日会ったって言ったでしょう?まるっきりリアだって気が付かなかったのよ」
マールがでしょうねと小さくつぶやいた。
「なぜ、そこまでするのか……」
マールが、せっせと眉毛を太くして、日に焼けた色のファンデーションを塗り、そばかすを書き込む私を非難がましい目で見ている。
「わ、私が悪いんじゃないからね!貴族なのに王立学園に通うお金がないんだから、個人的に家庭教師を雇うお金もないんだから……。庶民も通う学校に通っているってばれたら、社交界では馬鹿にされ、学校でも馬鹿にされ、つらい思いをするといけないからって。マールだって、身分を偽って通った方がいいって言ったわよね?」
マールがはぁーっと、ため息をついた。
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