アナ
畑に根を伸ばさないように目を光らせ、不要な竹を取り除き、倒れて危険そうな竹を刈り取り、春のタケノコがたくさん収穫できるように竹を間引き……。長年の経験と勘で竹林を管理してくれている。そろそろ60歳になるケールさんだ。
長年の経験と勘か。これも技能だよね。本の少しの土のふくらみからタケノコを見つけ出すのも技能だ。
うーん、でも、こう、いまいちインパクトに欠けるな。戦敗国となった時に、奴隷のような扱いを受けず身柄を保証してもらえるような……交渉できるような技能か……。
大体生活に密着した品物って、代わりの品もあるし、どの国でも作られているし、作れる人も多いよなぁ。
王城で見た絨毯やシャンデリアを思い出す。
高級品で、ほかの地域では作られない、技術を要する品……。
「ミリアージュお嬢様、このあたりの竹は燃やしていいか?」
ケールが、積み上げられた竹の山のうちの一つを指さした。
「燃やしちゃうの?」
ケールが頭をかいた。
「4年分くらいの竹が積みあがってて、もう置く場所がないんですよ。毎年毎年次々竹はとれるけれど、竹で物を作れる量も限られてますしね」
そっか。
「薪にしたら?」
売り物としては輸送費を考えればもうけがない屑だが、領内で消費する分には輸送費がかからないし、無料で使えたら得よね。
ケールがバツの悪そうな顔をする。
「いえ、それが……竹製品を作って出た端材を薪にしているはずで……」
ああそうか。もう、すでに多めに竹を渡して各家で少しずつ燃やしてもらっていたってことね。そうよね。領内で使う薪は「王都で売れる木」を使うことないものね。
「いいわ。山に火が燃え移らないように注意して燃やしてちょうだい」
ケールが頷いた。
何かに使える竹を燃やしちゃうなんて勿体ないなぁと思うけれど、もともと竹は何かを作るために栽培しているわけではない。
畑を守るために伐採した竹を使っているだけだ。もったいないからと伐採をしなくて畑がつぶれてしまっては本末転倒というものだ。竹刈りリーダーも苦渋の選択だろう。しっかり干しあがった加工に向いた竹から燃やしていかないといけないんだ。
置く場所……か……。
「穴を掘って……」
埋めちゃったら、もうちょっと置けないかな?
「ああ、分かりました。そうですね。燃やすならその方がええですね」
へ?