花
黄色い小さな花をくれた子供は、10年後には今の私と同じくらいの年齢になるだろう。
背中に赤ちゃんを背負っている女性は10年後には子供が増えているかもしれない。
山から切り出した薪を荷車に乗せて引いている男性は、腰が曲がった老人になっているかも。
……国が亡ぶとどうなるのだろう。
不作に備えるならば食べ物を備蓄しておけばいい。戦争になったときにも食糧は必要だろう。増税に耐えるにも……。
だけれど、うちの領地は農地が限られている。
街を出て、農地が見える場所へと足を運ぶ。100名足らずの領民が食べるのにも事欠く広さしかない。農地を広げようにも、竹林がそれを阻んでいる。いや、たとえ竹林がなかったとしても、山を切り開いて農地にするのも困難だ。
だったら、食糧を購入できる現金を手に入れるか。
「どうしたら、お金が手に入るのかなぁ……」
ぽつりとつぶやくと、マールが山を指さした。
「鉱山だったらいいですね」
確かに、農地は少ないけれど山は多い男爵領だ。山が鉱山だったら、ウハウハ……で、なくって……。
「それ、すぐに領地を取り上げられる案件で、ちっともよくないんじゃない?」
むしろ、金になる鉱山を狙って他国が攻めてくる理由にすらなる……。
ぶるぶると身震いする。
「だめね、お金を生みすぎる土地は危険だわ。広大で実り豊かな農地なんてのもない方がよかったくらいね」
そう考えると、豊かな領地だけではない。食糧をため込むにしろ、お金をため込むにしろ……奪われておしまいだ。
ぼそりとつぶやくとマールが頷いた。
「世の中いいことばかりでもなく悪いことばかりでもないってことですね……。お嬢様が皇太子妃候補に選ばれたのも、ある意味こうして備えることができてよかったのかもしれませんね」
そういわれればそうね。美女は損だ損だと、皇太子妃候補に選ばれるなんて不幸の極みだと思っていたけれど。
「ああ、いいことと言えば、サリーにも会えたのよ」
と、口にしてみてぱっといろいろなことがつながった。
「それはよかったですね!サリーが孤児院に出てからどうしてるのか心配していましたものね」
「マール、そうよ、サリーよ!サリーだわ!」
がくがくとマールの両肩をつかんで揺さぶる。
ごめんなさい。ここまでで、かなりタイトルの番号重複ミスとかあったので、番号は諦めます。
そして、入力するたびに半角全角切り替えが必要なのが地味にめんどくさい。
運営さん、入力初期設定全角にしてくれないかなー。確かそういうタグみたいなのなかったかなー