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「では選んでくれ。希望のドレスの番号を後で尋ねるよ。希望者が複数いた場合は、僕が一番似合いそうな子を指名するからね。さぁ、じっくり見て比べくれ」
運ばれてきたドレスに、令嬢たちが群がりあーでもないこーでもないと考え始める。
これは私が選ぶから、あなたは別のものにしなさいと交渉している令嬢もいる。
考えないと。ドレスのことじゃない。領地のことだ。100名足らずの領民。少ないからこそ、大きな家族のようなものだ。全員の顔と名前も分かる。私の誕生日には皆でお祝いをしてくれる。
こんなチャラ男が王様になったせいで、国が傾き領民たちが税に苦しみ、他国に戦争で負けて奴隷のような扱いを受けたらどうしよう……。
どうしたら助かる、助けられる?
「ミリアージュはどのドレスが欲しい?」
「ドレスなんていらない」
名前を呼ばれたのでほぼ条件反射で答えてから、青ざめる。
ざわりと場が揺らぐ。
「で、殿下のプレゼントをいらないなど、不敬もいいところですわ!」
「殿下のお選びくださったドレスはどれも気に入らないと言いたいのではありませんこと?ずいぶん失礼ですわね」
しまったぁ!
「どういうことだい、子猫ちゃん。もっと高価なドレスがご希望かい?」
殿下が私の目の前に立ち、顎をくいっと、くいっとした。うぐ、不敬だと言われなくて済んだのは助かったけれど……、これ、どう乗り切ればいいの?
「わ、私は……ご存じのように男爵家で、決して豊かな生活をしておりません。えーっとそれで……」
喪女だからおしゃれに興味がない。ドレスに魅力を感じない。なんて言えるわけもない。
「くすくす、そりゃぁ普段ドレスを選び慣れていないのであれば選び方が分からなくても仕方ありませんわよね」
「あらいやですわ。同情を誘って点数を稼ぐつもりかしら」
好き勝手に後ろでひそひそと離されている。いや、だけど、それに乗せさせてもらう。
「殿下からドレスのプレゼントなど、その恐れ多くて、私には着こなせるとも思えず、その……もったないお話で……」
私の顎をつかんだままの殿下がにこりと笑った。
「子猫ちゃん、君はドレスを男性が女性に送る意味を知らないのかい?着こなせるかどうかなんて関係ないんだよ。脱がすために贈るんだからね。遠慮せずに受け取ってね」
パチンとまるで音がするかと思うほどきれいにウインクを決める殿下。
え、脱がす……ため……?
って、10人全員に贈るってのは、全員脱がしたいとそういう?
こんの、くそチャラ王子め!




