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「だってそうでしょう?顔も合わせたことのない遠くに美しい女性がいるっていう情報は必要?隣国に1000年に一人現れるかといわれる美女がいるって言われても、へーそうですかって思うくらいでどうでもいいでしょう?」
ふぅっとファルカ様がため息をついた。
「それなのに、誰が一番美しいか競えなんて馬鹿なことに選ばれるなんて……」
馬鹿な事?
「あの、ファルカ様は、皇太子妃になりたいと思わないのですか?」
ファルカさんがクッキーの乗った皿を1枚持ち上げ、壁側に寄せてある椅子に座って食べ始めた。
慌てて、ジュースの入った白磁のコップを二つ手に取り隣の椅子に腰かける。
「皇太子妃になりたいなりたくないは関係なく、私はこれは出来レースだと思ってるのよ。たぶん、殿下はすでに心に決めた人がいるわね」
「え?嘘?だったら、逆に、こんなことしなくても……」
「だから、そこよ、そこ。競って一番美しい人は誰でしたっていう体裁にすることで、反対勢力を抑える狙いよ」
ファルカ様の言っていることがよくわからなくて首をかしげる。
「例えば、私やあなた。子爵や男爵の令嬢が皇太子妃になるなんてありえないでしょ?でも、美しい人を選ぶと宣言して、より美しいのはだれか競わせた結果、一番は子爵令嬢でしたってなれば、なんとなぁく、反対しにくいと思わない?」
「確かに……って、ってことは、殿下はファルカ様のことが好きってことじゃないですか?」
「って、可能性はあなたにもあるわよ。それに、もしかすると反王家勢力の家の者かもしれないし、殿下よりも年上の者かもしれない」
うえー、背筋が寒くなったよ。やだ、絶対私じゃないって言って!
……と、違う、そうじゃない。私じゃなかったらいいかっていうとそうでもない。……だって、好きな人と反対を押し切って結婚しよう!なんて、そこまで愛に溺れてるとか、まさに、相手が自分のことしか考えてない、国のことなどこれっぽっちも考えてない女性だったら、本当に傾国の美女じゃん。
愛されてるから殿下……のちの陛下をいいなりにして、好き放題なんて……。
こ、怖い。
「ありがとう」
2つ持っていたうちのコップの一つをファエカ様が受け取り、二人でジュースを飲んでいるところに、3人目、4人目、5人目と次々とご令嬢が現れはじめる。ファエカ様も私もそれ以降は選定のことにすいては何も話をしなかった。




