シュークリーム
私はシュークリームが好きではない。
シュークリームしか冷蔵庫に無かったとしても食べないくらいに好きではない。
けれど、シュークリームは私が好きなようで、よく冷蔵庫に居る。
両親は私に期待をしているから、私は期待に応えなくてはならない。
私は今日も、好きではないシュークリームに喜び美味しいふりをする。
両親のためだ。
なのにシュークリームは身の程を弁えずに勘違いをしだした。
いったいどこからそんな自信がくるのか、私を口説きはじめたのだ。
しかも口説き方がダサい。
冷蔵庫から出たことがないのか。
きっとろくな工場の生まれじゃない。
私は昭和臭いシュークリームも、そんなシュークリームにまるで釣り合ってると思われてることも嫌で堪らない。
周りが望むから、私が無理矢理耐えてるだけなのに。
どうやらこの安物シュークリームは私と結婚できると思っているようだ。
なんで傲慢な思い上がりだ。
この私が。
人間である私が、たかだかスーパー出身の500円もしないシュークリームの花嫁になるだなんて、どれだけ失礼な勘違いだろうか。
私ははっきりシュークリームを拒絶した。
親が喜ぶから食べてあげただけで、一度も好きなんかじゃなかったこと。
ずっとホテルの最上階のケーキが好きだったこと。
もう子供じゃない私はそれが食べれること。
庶民向けスーパー出身の食品は私の舌に合わないこと。
シュークリームは「ずっと好きでもないのにごめんね」と謝って冷蔵庫から出ていった。
私は少し罪悪感を感じ、シュークリームごときに罪悪感を感じたことが悔しかった。