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第七話 伴出、旅立つ

「そう、隠れ家に来たそいつがくれたのさ、あんたを狙うならこれを使えって」

 シンが答える。

 兵によって護送される前にサワキは盗賊二人組に聞きたいことがあったのだ。銃の出所だ。

「全身をポンチョで包んでいたからどんな奴だったかはわからないよ。声? 男と女両方聞こえたよ、あしゅら男爵みたいな感じさ」 

「なんでマジンガーZ知ってるんだよ」

「もちろん我々はリアタイ世代じゃありません、スパロボ知識です」

「なんでスパロボ知識があるんだよ」

「とにかくさ、詳しくはそいつを探し出して直接聞いてくれよ」

「……衛兵さん、こいつらどうなるんです?」

「さあね。ただ、この程度の事件なら町で決めることになるだろうさ」

 サワキは少しばかり考えるそぶりを見せたがそのままでいてもしょうがないので、とりあえずの目的にもどることにした。つまり、ここ西ワガサの町長を訪ねることである。


・ ・ ・


 町長宅には思った以上に簡単に入ることができた。ルーシーがそもそも用事があったからもあるが、サワキらが向かった頃にはもうすでに事件を解決したのがサワキだと伝わっていたためである。

「ようこそいらっしゃいました旅のお方。ブハハ」

 町長はいかにも町長といった見た目でそれ以上の説明のできない人物であったが、そんなことよりもサワキが気になったのは頭である。けっこうな年であるのに十分に原生林であった。

「うーん……」

「それとルーシー、ごくろうさんだったね、ブハハ」

「それで、町長様、荷物なのですが」

「うむ、よい、みなまで言うな。どうせ封印するために持ってきてもらったものじゃからな。まさかこの勇者オティの剣を使いこなすものが現れるとは」

「勇者?」

「ん、旅の方はご存知ないのか? 勇者オティを」

「あ、ええ、その……」

「もしかしたらサワキ様は異国の方なのですかにゃ?」

「まぁ、そんなものでして、なにせ色々と疎く不勉強で恥ずかしい限り……」

「なるほど。盗賊どもがカッパなどと呼んでいたのもそれと関係が?」

「は、まぁ、そうで――」

「いえ、それはこういうことですにゃ」

 ズルリ☆という音とともにルーシーがサワキの頭に巻いてある布を剥ぎ取った。

「ミーシャアアアァァ!!」

「ルーシーですにゃ」

「カンタァァアアアアアァァァア!!!」

「町長様うるさいですにゃ、カンタって誰ですにゃそれ」

「ど、どうなされたその頭は!? もしやさきの戦いで? す、すぐに医者を!」

「わー! そんなのいらん! いらんっちゅうに! これは天然だから!」

「し、しかし!」

「これもまた天然自然の中より生まれたもの! 言わば地球の一部! それを医者に診せるなど愚の骨頂!」

「し、失礼、取り乱しまして……しかし、思えばこれはますます勇者オティ。彼もまた異国よりふらりと現れ頭部が光輝いていたとかいないとか」

「別に光ってはいないだろうが! ……で、そのオティという者はどのような活躍を?」

「各地の問題を解決して回ったのです。山賊退治にいさかいの解決、ときに魔物退治と」

「勇者の最終的な目的は、やはり賢者?」

「そう! その通りです! と言うことはサワキ殿もやはり?」

「ええ。オティと目的が同じとは限りませんが」

「ならばこの西ワガサから街道に出てさらに西にあるコンデイトという都市に向かわれるとよいかと。そこに住むセルディー子爵家を訪ねなさるといい。セルディーはオティと縁深く、賢者の言い伝えにも詳しいとか。オティの剣はどうぞお持ちください」

(先駆者がいたのか……)

「そして、これはお願いにも近いのですが、道中そこのルーシーをお連れくださいませんか」

「はぁ、それはまた……」

「実はそこのルーシー、猫族の里を出てきたはよいものの、そのままどこに定着もせずフラフラしてる言わば野良猫でして、よろしければサワキ殿が飼い主になっていただけるとありがたいのです。いやなに、悪戯者ですがこう見えてなかなか役に立つ猫でして」

「はあ、ですが、自分は生活基盤もなく甲斐性がありませんし、それにこの子自信の考えも――」

「そんなことはありませんにゃ! にゃーからもお願いしますにゃ! そのオティの剣を持つ者のお供ができればこれ以上のことはありません、荷物持ちでもなんでもしますにゃ!」

「んー道連れがあると助かるには助かるし、とりあえずよろしく頼もうかな。なにかあったらまた町長さんの世話になればいい」

「けっこうけっこう。ただ、問題が」

「なんです?」

「その街道、例の二人組が取り仕切っていた盗賊の縄張りでして。あの二人が捕まったからとて果たして奴らがいなくなるかどうか」

「そんな場所にまで?」

「ええ。行動範囲がやたら広く、この町に続くいくつかの道のほぼ等距離に拠点を構えております。ここは栄えてはおりませんが色々な場所へのハブの役割をしておるので、ここに続く道のうち人がまばらな場所は盗賊には格好の狩場になるのですな」

「では、その街道も?」

「ええ、場所によっては。そして、盗賊団の規模からして、あの二人を失っても残党はかなり……」

「ふむ」

「どうしますかにゃ? さっきみたいな無茶はなしですにゃ。ぐるりと他の場所を迂回して」

「それだとずいぶん時間が……」

「町長、少し考えがあるのですが、協力いただけますか?」


 ・ ・ ・ 


 翌日、旅支度を整えた一つのパーティーあった。

 あまり多すぎず、しかし旅にはある程度必要なものを揃え、頭に巻いた布と腰には刀、そして、傍らに黒猫娘。

「さあて、失われた伝説を求めに行きますか!」

「蒼いナイフでも用意しますかにゃ?」

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