第61話 伴出、ともだちになりたい
「ハックション! ちくしょー誰か噂してやがんな」
サワキが鼻をすする。ブレディールの北、やや北西の方、迷いの森に乗っかるような形で例の洞窟はあるらしかった。
「うわ、今日日そんなこと言うキャラいないですにゃよ」
ルーシーが頭に腕を組みながら話す。退屈そうだ。
「いや、次元大介は言うだろ」
「いや次元は言いそうですにゃけども」
「コナンも言うだろ」
「······言いそうですにゃ。すみません、こちらのミスですにゃ」
「言うんだよみんな。藤原だって言うよ」
「どの藤原ですにゃ? 忍?」
「愁」
「ツルネ ― つながりの一射 ― の!? 言うわけありませんにゃ! そもそも藤原って呼ぶのやめてくださいにゃ馴れ馴れしい!」
「馴れ馴れしくねえって。藤原の「もう離すつもりはない」ってあれオレに言ってたんだぞ」
「黙るにゃこの駄人が!」
「駄目人間とかじゃなく駄人って尊厳もへったくれもない表現ですね······でもちょっと待ってください、くしゃみも仕方ないですよ。あの洞窟からすごい風が吹いてます」
パトリシアが目を細めながら余裕の雑談をかます二人に言う。
ガラガラと大八車のような荷車を引きながらサワキが首を振る。あまり触れないのでイメージにないかもしれないがサワキは普段頭にバンダナを巻いている。そのバンダナか風を受けて揺れていた。
「洞窟が息をしているんだな。しかしこの距離でこの勢いということは······」
風の来る方を見てみれば、岩肌の見える起伏が複雑に存在しており、その先に洞窟が少し見えていた。その辺りの地面やその周囲はどうにも殺風景で植物もまばらだ。
「近づけば近づくほどすごい風ですにゃよ。せっかく髪も少し伸びてきたからボブにしてたのに台無しですにゃあ」
「ちなみになぜ髪を伸ばしていらしたのです? ショートはサワ公の推し髪型だったのでは?」
「サ、サワ公······」
「べべべ別に理由なんてないですにゃぜよ」
「いや明らか嘘でしょう、龍馬出てますし」
「あ! ミーシャおまえ······先輩になるつもりだったんだろ!?」
「あにゃあ!!」
「先輩? ですか? なんのでしょう?」
「今度はのあ先輩(のあ先輩はともだち。 作:あきやまえんま)の非公式ライバルキャラを名乗るつもりだったろう! 年齢設定が同じだからってこの駄猫!」
「だってだって! あれちょっとポンコツなところのあるかわいい先輩と見せかけてガッツリ粉かけ女ですにゃよ! あんな特濃キャラがいるならもう一匹ぐらい“猫”の“先輩”が“ともだち”になったところで誰も気づきもしませんにゃ! ハイエナ戦法ですにゃ!」
「ざけんな早乙女先輩かわいいだろうが! オレがおともだちになりたいぐらいじゃい!」
「ま、まさかの苗字呼びですかにゃ······」
「それにハイエナなんていいもんじゃなくてただのイナゴだろ! だいたいおまえはなんでそっちのおっきい人ばっかり目標にするんだ!? おまえが狙うべきはテイルブルーのポジションだろうがサイズ的に!」
「い、いいい、いやワシあないにまでぺったんこやあらへんやんけ!」
「もう大阪弁どころが歪な河内弁になってますよ、動揺しすぎですルーシーさん·····ってあら?」
少し暗くなったことにパトリシアが気づいた。ぐちゃぐちゃとどうでもいい話をしているうちに三人は洞窟の中に入っていたらしい。
そして、そこを吹く風はもはや突風と呼んで差し支えないものとなっていた。
「ま、まるでプロトセイバーJBの空気砲ですにゃー!!」
ルーシーの声は即座に風にかき消されてしまった。
「JくんもいいけどRさんもいいよね、甲乙つけがたい」
しかしサワキには聞こえていたのだった。
「でもやっぱりジュンちゃんが一番ですよね」
パトリシアも普通に聞こえていた。
「相変わらずドリコン(ドのつくほどのロリコン)ですね······ほっ!!」
パトリシアに呆れたサワキが走り出した。引いていた荷車はちゃかりどこかに置いてきたらしい。
そして、追って二人も駆け出した後三人は一気に広がった。
風の勢いが一時弱まった瞬間だった。
広がったというのは、洞窟の先が広いドーム状になっていたのだ。
なぜ三人が広がったかというと、その広くなった通路の先あたりに人影が見えたからだった。
そして、その人影には敵意があった。




