第60話 伴出、今更感
「たとえばブレディール湖なんてもっとも警戒してるはずの場所なんだ。相手も当然相当の力を割いているはずだ。なのに小規模の武装集団の持つ船かなにかにわざわざ透明になるカムフラージュなんてとんでもないものをつけた斥候を派遣している。要するに普通の水上兵器ではないんだよ」
サワキが歩きながら話す。ルーシーにブレディールにあるモノについて説明しているのだ。
「はー、具体的にはなんなんですにゃ?」
「わかんない。でも、今から取りに行く黒い石はおそらくあの黒いメタルと関係がある」
「黒のメタル?」
パトリシアが聞く。
「魔力について詳しくないから適当なんだけど、今思うと金色の鎖は魔力値がゼロの魔法精製の金属とかなんじゃないかな?」
「黒で金? アメイジングマイティですかにゃ?」
「あの塔でヴィクトリアを封じていた鎖だよ。あれの先端、黒い部分だ」
「? まったく覚えてませんにゃ」
「第三十五話あたりを見直してくれ、あったんだよ」
「······私がまだ生まれる前の話です」
パトリシアがぽつりぽつり話し出した。
「四代前の王の威信低下とともに国中で争いが頻発した時代がありました。コンデイトもまた『メモリー』を巡って戦火に見舞われることになりました」
「勇者オティの時代の後ですね?」
「そうです。いえ、厳密には勇者の前の時代も、その前も、ずっと同じです。戦いの中でメモリーの技術は流用され転用され、世界を焼きかけています」
「今のサイ国王がそれを力で束ねられ一応の平和が訪れるまで、ですね」
「そうです。あるとき、セルディー家の領地も敵に攻め込み、我が先祖は勇者の時代の鉄兵士ヴィクトリアを起動させこれに挑みました」
「不思議です。ヴィクトリアは勇者の時代の終わりに誰にも解けない封印が施されていたはずです。その際にもそれは有効だったのでは?」
「はい。『賢者』に頼みそれを解いたとされています」
「『賢者』!? ここにきてようやく『賢者』の情報だぞミーシャ!?」
「へ? サワキくん賢者を探してたんでしたっけ?」
「第七話でおまえの前で西ワガサの町長と話したよ、勇者が賢者を求めて旅をしたのと同じようにオレも旅をするって」
「あらすじ解説ありですにゃ」
「そ、それでですね、その後のヴィクトリアの封印も賢者が行ったとされているのですが、勇者の時代の封印はもうできないとのことで、現代にあるもので封じたとのことなのです」
「それが黒いメタルによる封印、ですか」
「はい。よくはわかりませんが、それはこの世の理を超えたものだと。それは勇者の昔にはなかったものでよりよいものだから安心するようにと」
「金の鎖は勇者の時代のものでオレでも砕けずオティの剣でのみ破壊できる。黒い鎖は後の時代のものでオレでも砕ける。そして、オレがヴィクトリアのところへ行ったときにはその黒い鎖の封印も解かれたままだった······」
「それが変なんです。あの黒い鎖は誰も解いていないはずです」
「今から回収に行く黒い石が黒い金属と同じものなら少しはなにかわかるかもしれませんね······金の鎖を解いたときの『敵』は?」
「わかっていませんが、おそらくはトウ国かと」
「隣の国、ですか。なぜ金の鎖の封印は再度できなかったのでしょうか?」
「うーん、すみません、聞いてないですね」
「あ、あにゃあああああ!」
「なんだ、どうしたミーシャ?」
「ボクはルーシーですにゃ! いやそうじゃなくて、もう五ヶ月ぐらい放置しようとしてる中久々の更新となるこの回が不人気確定の説明回ですにゃ!」
「おう。まあ今更だな」
「今更ですね」
「もう諦めてるうぅぅ!」




