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第57話 伴出、特殊なバースと勘違いされる

「いいんですか? あいつ本当に行っちまいますぜ」

 第52話あたりでルーシーを呼びに来たベルかビューンと思われる背の高い男がセリーナに問う。

「いいんだよ。サワキバンデの考えはわかる。あんな連中を送り込んでくる以上もうコソコソしても意味はない。カードになりそうなものを用意して交渉することがもっともリスクを軽減する、そういうことだろう。正当性を持った気になったり見て見ぬふりが一番危険だ。そうだろう?」

 セリーナがサワキを見ると、すでに立ち上がり歩き出していた。

「さあね」

 歩みを合わせるセリーナにサワキはぶっきらぼうに答えた。

「しかし、厄介だなとかなにか迷うフリをした割には色々とわかっていたようだな。他にはなにがわかってる?」

「オレは劇場版機動戦士ガンダムⅡ 哀・戦士編(1981・松竹)の予告映像でアムロが『中尉〜!』と叫んでいるのを『ジュリー!』って叫んでいると思っていたぐらいだぞ、なにもわからんよ」

「どうしてアムロが唐突に沢田研二さんの名前を叫ぶと思ったんですかにゃ······」


 ルーシーとパトリシアもサワキに着いて歩き出す。

「むしろまだわかってないよ、色々とね」

「色々と?」

「あ、サワキくん、その手、あとで手当しますにゃね」

 ルーシーが指摘する。よく見るとサワキの手は傷だらけで血がずいぶん滲んでいた。

「あぁ、ありがとう······いやーあのデスガエル思ったより硬くってさ、計算違いだな」

 恥ずかしいのかサワキはそっぽを向いて歩調を早めた。

「案外マヌケなところもありますね。あんなに余裕ぶってたのに結局ボロボロになっちゃって」

 パトリシアが呆れ顔でサワキの背中を睨む。

「パトリシアさん、違いますにゃよ。余裕どころか、サワキくんは必死だったんですにゃ」

「え? 必死、ですか?」

「サワキくんはあの斥候達も、ここの人たちも、誰も犠牲にしたくなかったんですにゃ。だからあんな目立つ真似をして自分に攻撃を集中させて、手をズタズタにしてまで敵を助けたんですにゃよ」

「······しかも、それを悟らせたくなかったのですか。ふーん、甘いと言うか、かっこつけすぎですね。似合わないのに」

「ふふっ、そうですにゃね」

「いいや、あれぐらい気取れる男の方がいいのさ。あそこまでできる奴はそうはいない。君たちも捕まえるならああいう男にするんだね······って、君たちにはまだ早かったかな?」

「へえ、セリーナさんってセンス悪いんですね」

 そういうとパトリシアは一人で行ってしまった。


「彼女は君が嫌いなのかな?」

 パトリシアを見送ったセリーナがサワキの背中に声をかける。

「そうだよ。オレ、パトリシアさんが慕っている義理の母上にバチクソ嫌われてるもんでな」

「でも、君からなにかを感じてついてきたんじゃないのかい?」

 さっきまでの喧騒はいったん落ち着き、町は噂話をはじめる段階になっていた。さすがは海賊の町といったところだ。

「さあ、どうかな? そうだったとしても、期待外れと思われてるかもしれないしな」

「あーそれはパトリシアさんが悪いわ」

「いや、そんなことは」

「俺だったらそんな思いさせないのになぁ」

「いやいや、ん?」

「人に理解されないって辛いよね、その気持ちわかる。今度飲みに行こうよ」

 セリーナがサワキの肩に手を回す。

「え、まあ、いいけど。うん? ん?」

 セリーナがサワキに顔を近づける。

「ああ、そうそう、ここで生きていくつもりならウィップソードの使い方にも慣れないとね。これはここの重要な文化だからさ。これから教えていってあげるからね」

「あはは。いやいや、別にここで生きていくつもりは······」

「ん? ハハハ、俺の夫になるからにはここに住んでもらわなくては困るじゃないか」

「はにゃ? あのー? セリーナさん?」

 ルーシーが訝しげにセリーナの行動を見ている。

「だってそうだろ? 君は俺に胡蝶蘭が似合うと言ってくれた。胡蝶蘭の花言葉は『純粋な愛』、これはもうプロポーズも同然じゃないか」

「別にあれはそういう意味を込めて言ったわけじゃないんだけど······」

「ちょちょちょちょちょちょちょ待ってくださいにゃ!! えぇ! ちょ、セリーナさん、夫って、ええ! BL!? 夫って、アルファ!? サワキくんがアルファでセリーナさんはオメガですかにゃ!? いや、態度的に逆?!」

「落ち着けミーシャ、特殊なバースの話じゃない」

「でもでもでも、セリーナさんはサワキくんのことを······」

「やはりずっと勘違いしていたなミーシャ。セリーナ・ウェイブランナーは女性だよ」

 サワキは少し困った風に頭を掻いた。

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