第55話 伴出、壁を背にする
「うーむ、厄介だな」
サワキは頭を掻いた。
「サワキバンデ、あれがなにかわかってるのか?」
セリーナが剣を振りながら話しかける。
「なにかしらの兵器だろう」
「おそらく古代の魔兵器を復活させたものだ。彼らが着ていた特殊な鎧は操縦者用の装備だ。シノファリオはもう想像以上の力を持っていると考えていいね」
「ふーむ」
「なにをゴチャゴチャと!」
デスガエルから声がして、その鼻のような部分から光の弾が放たれる。
「くっ!」
セリーナはそのウィップソードで弾をすべて弾き落とした。
ふと見るとサワキがいない。サワキはなにやらウロウロしていて、ルーシーとパトリシアがそれを盾にするようにして一緒に移動している。
「なにをしているサワキバンデ! 俺から離れたらダメだ! 守れないじゃないか!」
セリーナは焦りつつもサワキの挙動から目が話せなかった。
「ワハハハ! バカめ! 今蜂の巣にしてやる!」
デスガエルが跳び、方向を変えるとサワキに照準を合わせた。
「推定弱点はやや後方の背側と腹側、つまり上下についているスリット部分だ。だいたい装甲目標はそこに共通して弱点を持つ。クラフトチャールとやらも例外ではないのだろう」
「······!」
デスガエルが動揺したように弾を放つ。が、それは当たらなかった。サワキの横に着弾し、埃をあげたたけだった。
「あ、あわわわ!」
「ちょ、ちょっとサワキさん!」
ルーシーとパトリシアは戦々恐々だが、セリーナはどこか納得したようにデスガエルとサワキを見比べた。
「この光弾は鉄兵士と同類のもののようだ。つまり、やはり魔法や魔力で動いている」
またウロウロするサワキ。放たれる弾丸、外れる射撃。
「······俯角と方位角、か」
セリーナが呟いた。
「そう。この光弾がデスガエルの主武装らしいが、向きがほぼ固定されているこの武器は対人に向いているとは言い難い」
サワキが答える。
「デスガエルからすると人はこの武器より下に位置することになるため、機体ごと俯角をとる必要がある。その上で対象が横移動をしていると、それを追うためにはデスガエルは歩くか機体をよじることになる。歩けば当然上下し照準はズレるし、よじるにも限界があって安定はとれない」
サワキはふらふらと歩くのをデスガエルは必死で追う。セリーナとサワキの言う通り、デスガエルは明らかにサワキを捕捉できていないようだ。跳んだりドタドタと向きを変えたりぐりぐりと捻ったりと忙しい
。
「足で動く兵器にこれは検討不足か設計ミスか······」
サワキは顔だけをセリーナに向けながらデスガエルに近づいていく。
「隙を作ったら推定弱点部分を穿ってくれ!」
ルーシーは何かを察したらしくパトリシアの手を引いてその場を離れだした。
「ああ、そうそう。あるいは妥協だ」
サワキがジグザグに走り出す。あまり機敏とは言えないが十分に効果的なようだ。
「く、くそっ! こいつ!」
デスガエルは脇を抜けたサワキを段差になっている防波堤のようなところまで追い詰めた。
「ここまでだ!」
「なんの妥協かと言えば、このデスガエルにはある特殊な兵装があって、武器を単なる固定砲台にせざるを得なかった」
サワキは段差にある狭い出っ張りによじ登った。足場は悪く、素早く動くことができない。追い詰められたカタチだ。
「くらえーっ!」
上方にいるサワキに向かってデスガエルがさらに迫り上を向いた。サワキの後ろには壁。逃げ場がない。
「その兵装とは透明化偽装だ。インビジブルカモフラージャーだっけ? あれがデスガエル自身にもついている。操縦者だけが透明になる意味はないからな。こいつは完全に不意打ち用なのさ。厄介だからここで潰したいところだ」
サワキは両手を広げて立ち止まった。
「サワキバンデ!」
追いかけてきたセリーナが叫ぶがもう遅く、光の弾は連射され、段差の壁を抉った。
しかしーー
「騙して悪いな。そもそもオレそれ効かないんだよ」
ーー光弾の雨をかき消しながらサワキがジャンプした。
明らかにデスガエルは動揺し、操縦席から驚きの声が聞こえた。
そして、デスガエルは動きを止めた。
「必殺! 魔力吸収抱き着き! ガハハ! 動けまい!!」
サワキが上を向くデスガエルの顔面部分にべたりとへばりついたのである。サワキの“特性”により、魔力で動くデスガエルは行動不能に陥った。
それを見たセリーナが勝機と感じ、顕になっているデスガエルの背中のスリット、その弱点と予想される部分へウィップソードの刃をすぐさま射出していた。




